2025年第3回定例会一般質問


1.RSウイルス感染症について

2.帯状疱疹ワクチンについて

3.外見ケアの拡充について

4.思春期の子供やその家族への支援について

5.まちなかへのベンチ設置について

公明党の松尾伸子です。

5点にわたり、区長にお伺いいたします。

1.RSウイルス感染症について伺います。

まず、高齢者の肺炎予防について伺います。

令和5年 の厚生労働省の調査によると、65歳を超えると肺炎による死亡リスクは急激に上昇し、肺炎死亡者の約98%が65歳以上とのことです。同年の本区の肺炎死亡者で65歳以上の割合も98.8%となっており、国と同じ傾向にあります。

高齢者の場合、基礎疾患を持っている方が多いため、免疫力の低下から感染症に罹りやすく、罹患した場合には重症化して肺炎を発症しやすい事は、このコロナ禍の数年間で広く知られています。

このような高齢者に対し、区では肺炎球菌ワクチンと高齢者インフルエンザワクチンの予防接種を実施し、令和5年度の実績では、肺炎球菌ワクチン接種状況は28.7%。高齢者インフルエンザワクチン接種では61.7%で、それぞれに対して区として接種費用助成を行っています。

そして、肺炎を引き起こすウイルス感染症として、今注意喚起されているのがRSウイルスです。

このRSウイルスは、2歳までにほぼ全員が感染し、生涯を通して繰り返し感染すると言われていますが、免疫力が低下した高齢者が感染すると重症化して肺炎のリスクが高まります。

RSウイルスワクチンは、国において平成25年に開発優先度の高いワクチンに指定され、令和5年9月に高齢者への接種を目的とした製剤が薬事承認、翌年1月から接種が可能となりました。

高齢者の肺炎予防として、肺炎球菌やインフルエンザと同様に大変重要なワクチンと考えますが、まだ世間に広く認知されていない感染症の為、まずはこのRSウイルス感染症について、区民への周知と高齢者における感染予防への注意喚起を積極的に行っていただきたいと思います。

日本初承認のRSウイルスワクチンは、60歳以上の成人を対象に、RSウイルスによる下気道疾患の重症化を予防します。このワクチンは60歳以上であれば誰でも接種できますが、特に気管支喘息や心不全などの基礎疾患を持つ方への接種が推奨されており、インフルエンザワクチンなどとも併用して接種できます。

また、このRSウイルスワクチンは、現段階では任意接種となるため、接種費用は2万円以上と非常に高額なワクチンです。高齢者の方が肺炎に罹患する事により介護費用や医療費も増加することが考えられます。そのため、高齢者の方が少しでも接種しやすくなる様に接種費用の助成を検討していただきたいと思います。

一方、高齢者と同じく感染リスクの高い、生後6か月までの乳児に対しても、重症呼吸器症候群を引き起こし入院管理が必要になる場合も少なくないとのことです。乳児に対しても重症化予防の対策が必要です。

RSウイルス母子免疫ワクチンは、妊婦に接種することにより母体の体内でRSウイルスに対する抗体を産生し、胎盤を通じて母体から胎児に移行することで出生後の乳児をウイルスから守り、乳児における感染症を原因とする下気道疾患を予防します。より高い効果を得るには、妊娠28週から36週の間に接種することが望ましいとされています。

そこで

RSウイルス感染症は呼吸器感染症であり、基礎疾患等を有する高齢者や乳児に対する重症化予防を目的としたワクチンの接種費用の助成を行ってはいかがでしょうか。区長のご所見を伺います。

 

 

2.帯状疱疹ワクチンについて伺います。

帯状疱疹ワクチンは本年(25年)4月1日から予防接種法に基づく定期接種化され、全国の自治体で実施されています。本来の対象者は「その年度に65歳になる方」ですが、2025年度からの5年間は、70歳から100歳までの5歳刻みの方も対象となる経過措置が設けられています。接種義務はなく、希望者が自己負担額を一部公費で負担して接種できます。

本区においては、2023年度より、独自で50歳以上からの帯状疱疹ワクチンの接種費用助成をいち早くスタートさせました。

国の定期接種対象者は65歳以上の高齢者であり、不安を感じていた50歳から64歳までの方については、暫定的な措置として本年度も任意接種費用助成を受けられるようになっています。

今後も引き続き、50歳から64歳までの方へも助成していただきたいと考えますが、区長のご所見を伺います。

 

 

 

 

 

 

3.外見ケアの拡充について伺います。

私は、以前より外見ケアいわゆるアピアランス支援の中で、特に、エピテーゼについての区の認識や、医療用ウィッグの購入費用助成を円形脱毛症をはじめとする皮膚科領域の方へ対象拡大をしてはどうかということについて、質問をさせていただいております。

このような外見に対するケアは、病気や障害を乗り越え、大袈裟ではなく、その後の人生を明るくし、生きる気力を蘇らせる大きな力になると確信しますので、今回も改めて、質問させていただきたいと思います。

まずエピテーゼは、義手や義足と異なり、身体に取り付け、簡単に取り外し可能な人口ボディパーツのことで、目や耳や鼻、爪や指、そして乳房などといった体の一部分を、人体そっくりに再現して、事故や病気、手術などによって身体の一部を失ってしまった人の見た目を補うことで、外見だけでなく、その方の心をもケアすることが可能な医療用具です。

人間の皮膚の質感は人それぞれで、その一人一人違う肌質に限りなく近づけていくエピテーゼは、シリコンの特性を生かして指先の指紋や爪の質感、しわ、浮き出た血管の色など、その方の肌や質感までも忠実に再現されます。

エピテーゼの需要で多いものの一つが乳房です。

乳がんの手術で乳房を摘出した場合、自家組織やインプラントによる再建という選択肢はありますが、完全に元通りになるわけではありません。手術には費用だけではなく、心身の負担が伴うため、「再建しない」ことを選択する人も多く、専用の補正用パットや下着はさまざまなタイプが発売されています。ただ着衣のときはカバーできても、温泉や公共施設での入浴、子どもや孫との入浴のときにエピテーゼがほしいという声が高まりをみせています。

当事者の方々にはなくてはならない必需品になります。

一般社団法人日本エピテーゼ協会を設立した、田村雅美さんは歯科技師でもあり「事故や先天的な欠損、また病気によりエピテーゼを必要とされている方は、実はたくさんいらっしゃいます。今後、スクールの中から技術者を輩出して、全国に相談窓口を作りたい。エピテーゼのことを広く知ってもらい必要な方にしっかり届くようがんばりたい」と決意されています。

一方、医療用ウィッグの状況ですが、NPO法人「円形脱毛症の患者会」の山﨑明子事務局長は「脱毛症の生涯発症率は人口の約2%。全頭用ウィッグが必要となる重症例は、その1割以上に達すると思われる。脱毛症にも使える制度に改善してもらいたい」と訴えています。2022年の調査によると、円形脱毛症の患者数は国内では200万人に及ぶといわれています。 どの年代にも発症しますが、20代、30代に多く、またその中で25%は15歳以下です。

ヘアドネーションの草分け的存在のジャーダックの渡辺貴一代表理事も「ウィッグを提供する約7割は脱毛症の子どもたちで、がんの子どもは2割に満たない。だが自治体の支援は、がん治療による脱毛に限定されている。」と指摘しています。

やはり当事者やご家族の切実な声を受け止め、脱毛症も対象にした制度創設・拡充に向けて発想転換が必要であると考えます。

東京都では、以前より都議会公明党が、がん患者への外見ケアを行う自治体への補助事業の対象に、脱毛症も含めるように主張してきました。そして昨年、先行自治体やウィッグメーカーから聞き取りを進め、ニーズなどの実態把握を行っています。

そんな中、本年度より都では、保健医療政策区市町村包括補助事業の中において、がん患者へのアピアランス支援事業の中で、がん以外の疾病や外傷などを補助対象に拡充し、エピテーゼなどを対象品目に追加することになりました。

港区では本年4月より、がんやその他の病気・けがなどの治療により外見に変化があり、ウィッグなどの外見ケア用品が必要な方、いわゆる脱毛や手術跡などによる見た目の変化などに対して、助成額を最大10万円を二回まで合計20万円と定める取り組みに踏み切りました。

そこで服部区長にお伺いいたします。

このような、見た目の支援は、人の目を気にすることなく生活を楽しみ、仕事のモチベーションを上げていくことへの支援として大変重要であると考えます。

本区においても、東京都の包括事業を活用して見た目の支援をいよいよ拡充してはいかがでしょうか。

区長のご所見をお伺いいたします。

 

 

4.思春期の子供やその家族への支援についてうかがいます。

欧米諸国では、生活指導や健康教育を通じて「病気になることを防ぐ」予防医療が非常に重要視されています。病気になると、その人の苦痛や治療に費やす時間やお金の負担が生じ、さらに学校や職場から離れてしまうことで社会としても損失になります。

思春期の予防医療は特に大切で、欧米では予防医療を提供するユースクリニック(若者専用のクリニック)も普及しています。

10代に生じた心身の不調や生活習慣の乱れは、大人になってからも不調を生じる大きなリスクになります。たとえば、大人になってから診断される精神疾患の半分は10代半ばまでに、4分の3が20代半ばまでに発症しているというデータがあります。また、10代のころに食事や睡眠の習慣が乱れ、そのまま大人なってもそうした習慣が続いてしまうと、生活習慣病や精神疾患などになる可能性が高まります。大人が心身の不調を生じ症状が重くなると、回復までにかかる時間や費用が増え、本人や周囲の負担も大きくなる上、社会的にも医療費の増大を招き、また元気に働ける人材の喪失にもつながると考えます。

現在、本区においても、不登校児童・生徒のケアや、何らかの生きづらさを感じ、社会になじめず、引きこもらざるを得ない方へのケア、また発達に関するさまざまな悩みを持つ方々やご家族への支援は、枚挙にいとまがなく、大変重要な課題であると考えます。

この夏、公明党区議団で岐阜県飛騨市へ伺い、視察させていただきました。

岐阜市では、2021年に、生きづらさを抱える方々の悩みごとに世代や分野を区切らず受け止め、専門性も持って相談対応する「地域生活安心支援センターふらっと」を開設し、さまざまな相談に対応してきました。その中で、社会に出る前の思春期の時間に自身の特性や自己理解を深めていれば、自身に適合する進路を見いだせ、社会に出てから辛い思いをせず活き活きと暮らすことができるのではないかとの考えから、2023年より飛騨地域唯一の入院精神医療機関である須田病院で勤務されている阪下和美医師より、アメリカなどで定着している思春期時の健診の重要性ならびにそれを実施する上での社会的な課題の存在を伺い、飛騨市を実装検証のフィールドとして飛騨市版思春期健診「ヒダ×10代ケンシン」を実施することになりました。

飛騨市内に住んでいる市内に通学している11歳~18歳、いわゆる「思春期」の皆さんを対象に、この時期ならではの心や体のこと、家庭や学校のこと、将来への不安など、さまざまな不調や悩みについて10代の健康の専門医が話を聞き、少しでも楽になる方法を一緒に考えていこうという健康診査です。

事業に携わった阪下和美医師は、「10代の若者は一見元気で、医療や福祉とは無縁のように思われるが、実際は、心と体の病気が多く「非常に脆弱でリスクが高い年代」。

発達途上の脳の働きの影響で、感情の制御や見通しをたてて行動することが苦手であり、さらに高等教育が普及している先進国では、子どもと大人の境界にいる期間が長くなり、自分の実現や自立、社会的責任などいろいろな葛藤を抱えて生きる時間が長くなった」と。坂下医師はおっしゃいます。

世界的にも思春期に健康上の問題が多いことが報告されていて、日本でも10代の子が病院に受診する最多の理由が「精神・行動の問題」であることがわかっています。このように、10代の若者のだれもが健康を損なうリスクを持っている。10代のうちに健やかな生活習慣を身につけ、心身を元気に保つことは、健やかな大人になるために必須であります。さらに、自分の健康を損なうリスクを自分で知ることはとても大切な予防方法になるということです。

このような10代健診の取り組みでは、思春期の子どもと医療者が1対1の対話の中で誰にも話せない心身の辛さを吐き出す作業が進められます。自分の健康について自分の言葉で考えながら話すことで自分のことを知る。解決に向けて前向きになっていける。心に抱えたおもりを軽くする経験になる。

その経験は、大人になってから「本当に助けてほしい」と思ったときに生きてくると思います。自分で助けを求める力を育くむことになると考えます。実際に健診を受けた子どもからも、受けて良かったとの感想が寄せられています。

本区においても、思春期の子供やその家族への支援を一層進めることは大変重要だと考えます。区長のご所見を伺います。

 

 

 

 

 

5.まちなかへのベンチ設置について伺います。

まちなかへのベンチ設置については、昨年の一般質問においても、お聞きいたしましたが、台東区は、令和3年3月に国土交通省が募集する「ウォーカブル推進都市」となり、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成を目指しております。その後も高齢者や障害のある方、妊産婦及び子ども連れの方々など、歩く意欲があるものの、長時間連続して歩くことが困難な方を多く見かけますし、まちなかへのベンチ設置に対する区民よりのご要望を多くお聞きしております。

現在はどのように、推進されていますでしょうか。

まちなかを歩いていて、荷物を置いて休憩し、再び体制を整えて歩き出す。そのようなちょっとした休憩スペースが欲しいと思う区民の方はたくさんいらっしゃると思いますが現状は、まだ公園の一部やバス停などの一部しかベンチを見かけません。

実際、私が住む町会内の公道に面する場所に、区民の有志の方々により設置されたベンチがあるのですが、老若男女に関わらず、皆さん思い思いに利用される方々を多く見かけますし、近隣のベンチが設置されているポケットパークでも同じ状況が見受けられます。

特に長期や連続的な歩行が困難な「ロコモティブシンドローム」の症状がある方にとってはなくてはならない場所になっています。

いうまでもありませんが、歩くことは、健康を増進させます。

また、ベンチは、近所の方とばったり会って、語らう時の憩いの場になります。毎年、猛暑に悩まされる日々ですが、気候が良くなるこれからにおいては、区民が快適に外出できる環境を整えることで、多様な活動が生まれ、地域のまちづくりの機運醸成につながることも考えられます。

近年、各地で区民参加型の「ベンチプロジェクト」の取り組みがはじまっています。

杉並区では昨年より、区民参加型予算事業による、まちなか木製ベンチ等設置補助金交付事業を実施し、昨年、第一号のベンチ設置を実現しています。

豊島区でも区民による「としまベンチプロジェクト」が生まれ、 地域の問題点を洗い出し、手作りのプロジェクトをすすめています。

ベンチ等休憩施設の設置にあたっては、歩道上は歩行者が安全に通行するためにスペースが限られており、休憩施設を単独で設置することが困難な場合が多いため、植栽桝とベンチの兼用等により限られた道路空間を有効に活用するほか、道路に隣接する区有施設や区有地はもとより、民有地への設置など、官民連携しながら進めていく必要があります。

本区においても、他自治体の取組みを参考に、区民や地域と協力しながら、区内の道路や沿道のスペースを活用し、ベンチ等を設置するなど、多くの区民が安心して「歩きたくなるまち」の実現に向け、取り組むべきと考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。

以上で一般質問を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。