台東区議会公明党 松尾のぶこ
- 気象防災アドバイザーの活用について
- 外見ケアの拡充について
- まちなかへのベンチ設置について
3点にわたり、区長に伺います。
- 気象防災アドバイザーの活用について
近年、異常気象による豪雨災害が頻発化しています。
台東区においても、2019年の台風19号による豪雨により、荒川が決壊する恐れがありました。あの時の区民の緊張感を忘れることはありません。
異常気象とは、過去に経験した現象から大きく外れた現象であり、今後、地球温暖化等の気候変動により、世界的に異常気象が増加する可能性が指摘されています。
日本においても近年、頻発する線状降水帯による災害に対応するため、各自治体において気象防災アドバイザーの活用が広がっています。
気象防災アドバイザーとは、自治体の防災の現場で即戦力となる者として国土交通大臣が委嘱した防災の知見を兼ね備えた気象の専門家です。 自治体に自らのリソースとして活用することで、気象台では手の届きづらい部分まで、よりきめ細かな支援を期待することができます。
昨年の6月2日、三河地方各地に大きな被害をもたらした記録的豪雨において、豊田市市街地では2日午後1時までの1時間に35ミリの雨を観測し、道路の冠水などの大きな被害が発生しました。
このとき、豊田市では前日の1日のうちに市立学校の臨時休校を決め、2日には市内全域に避難指示を発令するなど、豪雨に見舞われる前に、最大の警戒態勢を取りました。市がこうした態勢を取った背景には、5月31日昼ごろ、豊田市の気象防災アドバイザー(早川和広さん)の、「台風の接近に伴い、6月2日から、1時間に50ミリの非常に激しい雨が想定される線状降水帯が形成される懸念もある」 との助言からでした。
この気象防災アドバイザーの長年の知見と気象台の情報を基にした助言を参考に、市は翌6月1日、対策会議を開催。市民の命を守るため、市立小中学校など計104校を2日に臨時休校する方針をいち早く決めました。
2日には、アドバイスが的中し、県上空に線状降水帯が発生。激しい大雨により、河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、市内で100件を超える建物などに被害が出ました。
1級河川の矢作川も氾濫直前まで増水しましたが、学校の休校に加え、市が2日午後に市内全域に避難指示を素早く発令するなど最大の警戒態勢を取った結果、人的被害はゼロに抑えられました。
また千葉県野田市では、気象防災アドバイザーを講師に迎え、市民防災講座を開催。早めの避難行動に役立つ防災気象情報の活用法や線状降水帯の発生の仕組みなどを住民が学ぶ機会を得て、「気象情報への関心が高まりました。早期の避難を心掛けたい」との感想が寄せられたということです。
私たちの地域においても、異常気象による災害が発生する確率は年々増していると言えます。この異常気象による災害を事前に予測して、適切に対応することにより地域住民の生命や暮らしを守ることは、自治体の大きな使命であると考えます。
私は常々、平常時から災害に備えて、区民の皆様に刻々と変わる豪雨災害対応の知見について最新の情報を周知徹底する機会の提供の必要性を実感しております。
気象防災アドバイザーを活用することにより、区民に対して災害時の想定されうる状況について広く周知することができると考えます。
気象防災アドバイザーの活用については災害時と合わせ平常時の防災教育の中でその知識と経験を発揮する機会を持つべきと考えます。
そこで、災害に備え、区民に対する防災意識の啓発について、気象防災アドバイザーの活用を進めるべきと考えますが、区長のご所見をお伺いします。
- 外見ケアの拡充について
エピテーゼについてご存知でしょうか。
エピテーゼとは、義手や義足と異なり、身体に取り付け、簡単に取り外し可能な人口ボディパーツのことです。
目や耳や鼻、爪や指、そして乳房などといった体の一部分を、人体そっくりに再現していて、事故や病気、手術などによって身体の一部を失ってしまった人の見た目を補うことで、外見だけでなく、その方の心をもケアすることが可能な医療用具です。
人間の皮膚の質感は人それぞれです。その一人一人違う肌質に限りなく近づけていくエピテーゼ。作成する技術を持つ方は歯科技工士の技術者が多く、続々と人材が輩出されています。
エピテーゼは、シリコンの特性を生かして指先の指紋や爪の質感、しわ、浮き出た血管の色など、その方の肌や質感までも忠実に再現されます。
エピテーゼの需要で多いものの一つが乳房だといいます。
乳がんの手術で乳房を摘出した場合、自家組織やインプラントによる再建という選択肢はありますが、完全に元通りになるわけではありません。手術には費用だけではなく、心身の負担が伴うため、「再建しない」ことを選択する人も多く、専用の補正用パットや下着はさまざまなタイプが発売されています。ただ着衣のときはカバーできても、温泉や公共施設での入浴、子どもや孫との入浴のときにエピテーゼがほしいという声が高まりをみせています。
エピテーゼは専用接着剤で装着するので入浴可能ですので安全。当事者の方々にはなくてはならない必需品になります。
一般社団法人日本エピテーゼ協会を設立した、田村雅美さんは「事故や先天的な欠損、また病気によりエピテーゼを必要とされている方は、実はたくさんいらっしゃいます。新しい人生に向けてのお手伝いができてとてもうれしい。今後のスクールから技術者を輩出して全国に相談窓口を作っていけたらと思います。まだまだこの技術が知られていないので、エピテーゼのことを広く知ってもらい必要な方にしっかり届くようがんばりたい」と決意されていました。
また、最近では病気やけがで髪を失った“ヘアロス”の人を支える外見(アピアランス)ケアに社会的な関心が高まっています。
2022年の調査によると、円形脱毛症の患者数は人口の2%、国内では200万人に及ぶといわれています。 どの年代にも発症しますが、20代、30代に多く、また25%は15歳以下です。
現在、医療用ウィッグ(かつら)への公的助成が広がるだけでなくウィッグに使ってもらおうと自らの髪を寄付する「ヘアドネーション」に協力する人が増えています。
ヘアドネーションは米国の団体が始めた活動です。日本ではNPO法人「ジャパンヘアードネーションアンドチャリティー通称、JHD&C(ジャーダック)」が草分け的存在で、2009年から18歳以下の子どもに医療用ウィッグを無償提供する活動を始めました。渡辺貴一代表理事は「設立当初は月1、2件だった髪の寄付が、最近では1日500件前後になっている」と社会への浸透を実感しています。
民間で支援の輪が広がる中、自治体では医療用ウィッグなどの購入助成制度の導入が相次いでいます。
日本毛髪工業協同組合の調べによりますと、導入自治体は今年4月時点で647団体。
ただ課題も見えてきました。渡辺貴一代表理事は「ジャーダックがウィッグを提供する約7割は脱毛症の子どもたちで、がんの子どもは2割に満たないということ。だが自治体の支援は、がん治療による脱毛に限定されている」と指摘しています。
ジャーダックが全国自治体を対象に行った聞き取り調査では、21年当時、助成対象に脱毛症を含めていたのは群馬県高崎市のみでした。
NPO法人「円形脱毛症の患者会」の山﨑明子事務局長は「脱毛症の生涯発症率は人口の約2%。全頭用ウィッグが必要となる重症例は、その1割以上に達すると思われる。脱毛症にも使える制度に改善してもらいたい」と訴えています。
やはり当事者やご家族の切実な声を受け止め、脱毛症も対象にした制度創設・拡充に向けて発想転換が必要であると考えます。
千葉県流山市では、円形脱毛症の中でも最重度の「汎発型(ぼんぱつがた)」を発症した女子中学生のご家族からの切実なご相談、ご要望をきっかけに市は22年度から、がんだけでなく、その他の疾患のある人も対象とした助成制度を開始しました。
流山市では、加齢性の脱毛は対象とせず、申請には治療方針計画書などの提出を求めるようになっています。市の担当者によると、昨年度の医療用ウィッグ助成の申請件数は79件そのうち脱毛症の方は5件あったということです。
また 隣接する野田市でも、この“流山モデル”を参考にした制度が昨年度から始まりました。
東京都では、都議会公明党が昨年6月の代表質問で、がん患者への外見ケアを行う自治体への補助事業の対象に、脱毛症も含めるように主張しています。都は現在、先行自治体やウィッグメーカーから聞き取りを進め、ニーズなどの実態把握を行っています。
また、脱毛症も対象に入れてと、目白大学看護学部 野澤桂子教授はこうおっしゃって言います。
「各地で熱意を持って、ウィッグなどの購入助成を進めてくれており心強い。今後、二つの「拡大」が大事になる。
一つは助成を行う自治体の「拡大」だ。財源確保が大変かもしれないが、助成額は高額でなくてもよい。ウィッグの性能と価格が比例するとは限らないからだ。日本毛髪工業協同組合の認証を受けた医療用ウィッグは1万円台からある。複数の調査で、ウィッグ購入費の中央値は3万~5万円だった。
もう一つは、助成対象の「拡大」だ。現在、がん患者に限定する自治体が大半だが、脱毛症やけがなどでヘアロスに悩み苦しむ人々も包摂する制度が、公的支援としては望ましいのではないか。
割高になるウィッグのカット代への補助や、ウィッグをカットできる理美容師の養成など、多様な取り組みと組み合わせることで、低廉なウィッグでも利用者が満足できるものになる。ウィッグ専門店のない地方での患者支援として、通販の利用を視野に入れた制度も考える必要がある。外見ケアが全国的に定着していくよう、今後も期待している」とおっしゃっています。
私も同じ思いです。このような外見に対するケアは、病気や障害を乗り越え、大袈裟ではなく、その後の人生を明るくし、生きる気力をよみがえらせる大きな力になります。
そこで服部区長にお伺いいたします。
このような、見た目の支援は、人の目を気にすることなく生活を楽しみ、仕事のモチベーションを上げていくことへの支援として大変重要であると考えます。
見た目の支援を拡充してはいかがでしょうか。
区長のご所見をお伺いいたします。
3.まちなかへのベンチ設置について
台東区は、令和3年3月に国土交通省が募集する「ウォーカブル推進都市」となり、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成を目指しております。
しかし、一方で高齢者や障害のある方、妊産婦及び子ども連れの方々など、歩く意欲があるものの、長時間連続して歩くことが困難な方もおられます。
まちなかを歩いていて、荷物を置いて休憩し、再び体制を整えて歩き出す。そのようなちょっとした休憩スペースが欲しいと思う区民の方はたくさんいらっしゃると思います。特に長期や連続的な歩行が困難な「ロコモティブシンドローム」の症状があるかたはなおさらです。
また台東区では、昔から下町情緒が残る路地や家の軒先に、縁台を出して、隣近所の方々が語らい憩う文化がありました。
現在、なかなか見かけなくなり寂しい思いです。
台東区は、バリアフリー基本構想の基本理念として、「誰もが自分らしく暮らせる安心安全で快適なまちの実現」を掲げていますが、現状は公園や一部のバス停ぐらいでしかベンチなどを見かけることはありません。
歩くことは、健康を増進させます。また、ベンチは、近所の方とばったり会って、語らう時の憩いの場になり、また座って風景を眺めるとその場が一瞬でオアシスになり、心の健康に寄与します。区民が快適に外出できる環境を整えることで、多様な活動が生まれ、地域のまちづくりの機運醸成につながることも考えられます。
近年、各地で「ベンチプロジェクト」の取り組みがはじまっています。
豊島区では、高齢者などが安心して外出できる環境づくりに加え、ベンチを置くことでそこに小さな コミュニティができ、防犯にもつながる。このような議論と検討を「地域のささえあいの 仕組みづくり協議会」で行うなかで「としまベンチプロジェクト」が生まれました。 高田地域の民生児童委員や町会関係者の協力で、日本福祉教育専門学校の学生、関係機 関などが地図を片手にまち点検をし、地域の特徴や課題を知るところから始めました。また、まち歩きを振り返るなかで、地域に合わせてどんなベンチがあるといいか、必要かを 具体的に意見交換しました。 今後ベンチの設置を目標に、住民・学生・社協など関係機関が地域について共に考え、 つながりを深めていくプロセスを大切にしながらプロジェクトをすすめています。
福岡市では、すべての人が安全で快適に利用できる、「バリアフリーのまち」を実現するための施策の一つとして、高齢者や障がい者、妊産婦や子ども連れの人などの休憩需要に応えるため、歩道上や市有地・民有地の道路沿いの場所へのベンチ等休憩施設の設置推進に取り組んでいるということです。
ベンチ等休憩施設の設置にあたっては、歩道上は歩行者が安全に通行するためにスペースが限られており、休憩施設を単独で設置することが困難な場合が多いため、植栽桝とベンチの兼用等により限られた道路空間を有効に活用するほか、道路に隣接する区有施設や区有地、民有地への設置など、官民連携しながら進めていく必要があります。
以前の台東区の昔ながらの多様な文化を残しながら、まちなかにホッとでき、一休みできる空間を設けることは、その場のコミュニケーションを生み出し、地域の方々が安心して外出でき、また外出への意欲を促します。そして街歩きの楽しさと安全な歩行空間を維持することは区民にとって特に、子供の健やかな育ちを助け、また高齢者にとっても健康寿命を延伸していくという効果をもたらすと考えます。
台東区においても、区内の道路や沿道のスペースにベンチ等を設置するなど工夫を凝らし、多くの区民が安心して、ますます「歩きたくなるまち」の実現に取り組んではいかがでしょうか。
区長のご所見をお伺いいたします。