令和6年度予算特別委員会 総括質問
公明党 松尾伸子
防災減災の対策について、3点にわたり区長と教育長にお伺いいたします。
本年の3月11日、東日本大震災より13年が経ちました。
2021年からは3月11日を「防災教育と災害伝承の日」にとの動きがあります。
東北大学災害科学国際研究所では震災の風化を防ぎ防災力の向上を図るために、国が制定する3月11日を「防災教育と災害伝承の日」とすることを目指して、震災伝承や防災に関する支援事業を行う東北地域づくり協会との協定を結びました。
東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長は、東日本大震災の教訓からまず「我々は備え以上のことはできない」とし、次に「事前防災はソフト面、ハード面含めて確実に被害を軽減するが、やはりゼロにはできない」三番目に「危機管理と対応計画は考えられる最悪のシナリオに基づいて実施しないとうまくいかない」と。そして将来起こりうる大災害については「不確実な状況下でどのような判断をし、対応していくかが求められる」とし、最後に「今後はレジリエント(回復力ある)社会構築が必要」だとおっしゃいました。
本当にその通りであると思います。
本年1月1日に発生した、能登半島地震からは2か月がたちますが、避難所生活も長きにわたり、いまだ輪島市や珠洲市の90%の地域で断水が続いているとのことです。一日も早い復旧復興を祈ります。
あらためて、この時節に、台東区地域における防災減災の対策を強固にすべく、一つ一つ確認を重ねていかなければとの決意を込めて、伺います。
- まず初めに避難行動要支援者対策の推進について伺います。
能登半島地震でも、高齢者、障害者をはじめ、災害時の要配慮者への対応が課題となり、避難時に支援が必要となる避難行動要支援者の不安を取り除く対応が大切と考えています。
区では名簿掲載の対象要件を、75歳以上の単身世帯、または75歳以上のみの世帯のほか、愛の手帳1から3度の所持の方など、様々な要配慮の方を対象としていますが、対象要件の線引きだけでは、難しい事例が見られます。
例えば、対象外である、愛の手帳4度の方でも抽象的な思考が苦手で込み入ったコミュニケーションが困難な方もいて、避難の際には支援が必要です。また緊急通報システムを設置した方も不安解消では、対象にすべきと思われます。
現行でも対象者に該当しなくても「その他特に支援を必要とする方」とあり、要配慮者が希望する場合は、名簿掲載には要相談になっておりますが、なるべくわかりやすい要件を明記した方がよいのではと考えます。
先日、町会の方による避難行動要支援者名簿を活用した安否確認や避難同行のモデル訓練を拝見し、歩行困難の方の避難時などの課題が把握できました。
避難が困難な方々が安心して生活するためには、平常時から何かしらの形で名簿の提出先の方々と交流することでの居住状況の確認や、避難時を想定した実践的な訓練を繰り返すことが必要であると考えています。例えば名簿提出先のひとつである、担当地域の消防団とも訓練を実施してはいかがでしょうか。
普段から顔見知りになっているということが、いざという時に避難行動の助けとなると考えます。
そこで、要配慮者で、避難行動要支援者名簿の登録要件の対象外の方も、避難時に不安がある方は、名簿に登録できる場合があることの周知や、また発災時に速やかに避難するため、関係機関との連携した訓練が必要と考えますが、区長のご所見をお伺いします。
- 次に避難所運営についてうかがいます。
各避難所で避難所運営キット活用訓練が活発に行われています。
私も先日参加させていただきましたが、訓練の中で参加された町会関係の方々からは様々なご意見や要望が寄せられ、実際に発災した直後には大変な混乱が予想され、不安の声もありました。
実際に避難所生活を経験した方に聞いた避難所で困ったことの中でトイレの不足に次いで、プライバシーの確保が挙げられていました。
実際に避難者がいらっしゃるスペースが基本は体育館になるかとおもいますが、プライバシー確保のための更衣室や避難者同士のトラブルを防ぐための対策、特にコミュニケーションを取りやすくするための談話室、また、障害がある方などの一時的な避難スペースなど避難所生活にとって必要なスペースをどう確保できるのかは、大変に重要なことだと考えます。
今までにも被災地でも見受けられた性犯罪、性被害、セクシャルハラスメントなどのトラブルを未然に防ぐための対策も喫緊の課題です。
また、万が一感染症が蔓延した時の隔離のスペースを確保するなどの対処を想定しておかなければなりませ。
区内でも実際に福祉避難所の不足の懸念がある中、一般避難所の福祉的な機能を高めることが望まれ、あくまで学校施設としての機能も守りつつ、避難スペースとの線引き、部屋割りなど課題があると考えます。
東日本大震災では2023年12月時点で災害関連死が3,802人にのぼり、66歳以上が88%を占めているとのことで、避難生活が長引く中で精神的にも肉体的にも疲労を蓄積した結果、もともとの持病を悪化させるなどが要因だということです。減災の観点からも福祉的な避難スペースの確保は大変重要になります。
訓練の中で、実際の想定をすることで、事前に準備できることがあると考えます。
減災の観点から、やはり限りなく実際に即した訓練の必要性を強く感じました。
また、実際に大地震が発生し、避難所を開設した際には、訓練に参加した区民が中心になって避難所運営を行うことが期待されますが、避難者全員が一丸となって運営すべきと考えます。
東日本大震災や熊本地震、能登半島地震など、過去の災害事例を見ても、そのことは明らかです。
そこで、今後、訓練に参加していない区民に対しても、避難所運営に対する理解を深める取り組みを広く行っていく必要があるのではないでしょうか。
区長のご所見を伺います。
- 最後に防災教育について教育長にお伺いいたします。
国では、2022年に防災教育を第3次学校安全推進計画の柱に「地域の災害リスクを踏まえた実践的な防災教育の充実」として位置付けました。
内閣府防災情報のページ「みんなで減災」では、防災教育は究極的には命を学ぶことであるが、そのためには、災害発生の理屈を知ること、社会と地域の事態を知ること、備え方を学ぶこと、災害発生時の対処の仕方を学ぶこと、そして、それを実践に移すことが必要になる。とあります。
防災教育は、すなわち減災教育でもあります。
災害は必ず訪れる。その時に備えをしておくことで被害を最小限に抑えることができるということです。
いま一度、東日本大震災発生時に、釜石市の小中学生は、地域に伝わる教えを守り、全員が奇跡的に避難することができたという、あまりにも有名な「釜石の奇跡」の教訓について確認したいと思います。
釜石市は、2006年から5年間、専門家の指導の下、徹底した防災教育を行っていました。防災教育は、まず、大人の意識改革から始まったそうです。三陸地方は、必ずまた津波に襲われる。そのときどうやって子供の命を守るのか。初めはあまり関心のなかった教員達もやがて真剣に教材作りに励み、子供たちに、実際の津波の映像を見せ、算数・数学の授業では、実際の津波の高さを実感させたり、津波が自宅へ到達する時間を計算させたりしたそうです。また、地域の住民と一緒になって、避難訓練に励みました。
同市の防災教育に携わってきた群馬大学大学院の片田教授が教えてきたことは、
1.想定を信じるな。「自然の振る舞いを固定的に考えてはいけない」
2.ベストを尽くせ。「その状況下において最後までベストを尽くせ。」
3.率先避難者たれ。「君が逃げれば、みんなが逃げる。率先して逃げることが多くの人の命を救うことにつながる。」と。
日ごろから、繰り返し、叩き込まれてきた子供たちは、中学生を先頭に、また、その姿を見たすべての人々が、自分たちの力で、どこまでも、上へ上へと駆け上がり、小さい子供とお年寄りの手を取って一緒に全員避難することができたのだそうです。
東日本大震災より13年たった現在でも、日頃からの家庭と地域そして学校での防災教育の重要性を強く実感いたします。
この教訓を踏まえ、本区においては首都直下地震などの教訓にあてはめて、たとえば、幼稚園などで、幼児期より読み聞かせの本の中に、防災の本を入れていくことや、防災カードゲームを活用した遊びの中で自然に身に着けていくこと、また、小中学校においても災害の起こるメカニズムや自助の観点で自身と身の回りの人を守るすべを学ぶ機会を持つことのできるよう例えば、防災教育推進モデル校を指定し、行く行くは全校へと広げていくなど、防災教育の充実を図っていくべきと考えます。幼少期に刷り込まれた生きる力は
今後も、スピード感を持って、さらに、検討して頂き、実際の避難訓練も内容の充実と想定ごとの訓練の頻度を増やし、様々な想定を子供たちに投げかけながら、その都度どう行動に移すかなどの実施方法の検討もぜひお願いいたします。
また地域の避難訓練の折などに、防災の担い手としての役割をもって参加し活躍できるようにしてはどうでしょうか。
いずれにしましても、様々な災害に見舞われる日本において、子どもの時から繰り返し、防災に関する知識を得て、災害は自分にも起こりうること即ち「自分ごと」としてとらえることが肝心であり、防災教育により自発的に考える力をはぐくむこともできるようになると思います。
そこで、区の防災教育の現状と今後の方向性について、教育長のご所見をお伺いいたします。
(区長教育長答弁)
また防災教育に関しては、被災地の教訓からも震災後の復興の観点から子供たちや若者が復興の担い手になっていくわけです。
昨年、谷中地域において都市復興模擬訓練が実施され、ワークショップの中でも、地域のつながりを活かした多世代の交流、次世代の防災の担い手の育成や多世代が参加しやすい復興に向けた場づくりに対する様々なご意見があったわけですが、災害後の都市の復興についても多世代間での協力が不可欠で、日頃からの交流が大切になってまいります。子供たちが地域の一員として、誇りをもって防災の担い手としての自覚をもち行動できる環境を整えつつ、今後も総合学習などの機会を捉えて防災教育が進むことを要望いたします。
先日実施された近隣町会での安否確認訓練のおり、防火防災協会作成のドアノブにかける形の安否カードを実際使った中で200人近い方が協力くださったとのことです。その折、屋外に面している相当数のお宅では、ドアノブなどにかけていたカードが強風にあおられ道路に落ちてしまったそうです。
もう少し工夫された、マグネット式や、シールなどの安否確認カードを、ぜひ区として独自の取り組みをしていただけることを要望します。
以上で、私からの質問を終了いたします。
ご清聴ありがとうございました。