平成26年第2回定例会一般質問


  1. 産後ケアについて
  2. 介護予防について
    1. 高齢者の居場所づくりについて
    2. 認知症早期発見のためのチェックサイト導入について
  3. 移動式赤ちゃんの駅について
  4. 待機児童対策について

DSC_6364 台東区議会公明党の松尾伸子でございます。

会派を代表し、一般質問させていただきます。

区長・教育長におかれましては、前向きなご答弁を頂けますようお願い申し上げます。

初めに、産後ケアについて、二点伺います。

近年、核家族化が進み、出産直後から面倒を見てくれる人がいない、また、地域コミュニティーの希薄化に伴い、相談相手がいないなど様々な生活環境で孤立しがちな産前産後の母子への支援体制、特に、産後間もない母体へのケアが、大変重要であります。

元来、母性本能は、女性が持ち備えているものと一般的には考えられていますが、実は、産後、お母さん自身が、夫や家族などの支援者に、手助けしてもらい大切にされる、受容体験により、脳内物質のオキシトシンなどが分泌されてはじめて我が子を愛おしいと思えるようになると京都大学山中教授は述べていらっしゃいます。

妊娠から始まり、出産直後の女性の体の中では、ホルモンバランスや骨盤の変化などにより、急激な大変革が起こっています。昔から、床上げまで三週間は、心身ともの休養が必要だといわれているのはそのためです。この産後1ヵ月間のお母さんの心身は大変不安定で、産後鬱や育児不安に最も陥りやすい時期なのです。

また、赤ちゃんにとっては、この1ヵ月間の母子の相互の関係について児童精神分析者、ボウルビー氏は、「親子関係の質が個人の長期的で社会的・心理的健康を本質的に決定づけるものである。」と述べられています。その意味からも、良好な母子の愛着形成を促進するためには、産後1ヵ月の支援が重要になってくるわけです。

ところで、出産間もない母親の家事・育児を支援する専門職として「産後ドゥーラ」という民間資格があります。ギリシャ語で他者に寄り添う経験豊かな女性という意味を持つ「ドゥーラ」は民間の訪問型の支援として、助産師もこの活動に積極的にかかわっています。財団法人ドゥーラ協会のメインテーマは「母親も すくすく育つ 世の中に」です。

「すべての女性が、産前産後を心身ともに健やかに過ごすための知識や情報、及び家族や地域社会とのつながりをもつこと」をビジョンに掲げ、産後の家庭を訪問し、家事や育児のサポートをし、育児に対する不安感に耳を傾け必要に応じて専門機関につなげるなどの支援を行っています。

世田谷区の武蔵野大学産後ケアセンター桜新町の利用者110名を対象に行われた、調査によりますと、89.1%が「核家族」であり、利用した動機としては「家族の援助が受けられない」が、1位で、利用者全体の74%以上が30歳から39歳のかたでした。また、育児技術に対する不安は、「授乳について」が80%で、最も多く、病院産院では、一通り教えて頂いても、最近は、入院期間が短くなり、産後直後、帰宅してから、本当に授乳がうまくいくかどうかということに不安を抱きながら退院していることが多いのです。

厚生労働省の人口動態統計調査によると、第一子出生時の母親の平均年齢も年々高齢化し、2012年では平均年齢が30.3歳と報告されました。

一般的に30代は、20代の女性に比べると体力の低下は著しいものがあるといわれております。

また、高齢出産の場合、支援者となる両親も当然高齢化しており、なかなか援助が受けにくい場合が多くなります。

特に住宅密集や集合住宅が多い都会での子育ては、子供が泣きやまないこと一点取ってみても、母親はいたたまれない思いに落ち込み、本当はかわいいわが子にもかかわらず、逆に子どもが負担に感じる精神状態に陥りやすい母親もいます。この時の隣近所に対する母親の神経の使い方は相当なものです。私自身もこんな思いをし、心を痛めた経験があります。

産後直後の急激な環境の変化のなかで、ゆっくりと話を聞いてもらえる相談相手も少なく不安な状況の中で、育児や家事も思うようにできず、イライラが募り、ひいては虐待などのリスクへ移行してしまう要因となる可能性を秘めています。

やはり子育ては、親育てから。まず母親が、安心して、

育児に集中でき、母親自身も、ゆっくりとすくすく育つ環境を整えることで、母子の関係の自信が育まれ、子どもも健全に育つことができるのです。

このような背景によるなかで、本区においては、産後4ヵ月までの乳児家庭全戸訪問を保健師や助産師が行ってくださっています。

主に育児不安の軽減や産後鬱への対応などを行っていただいているところですが、今後、産後直後1ヵ月が心身の状態も不安定で育児不安に陥りやすい時期であることから、まずは、全戸訪問の時期を早めていただき、早期の産後ケアの体制を整えていただくことで、産後鬱や虐待などを未然に防ぐことができると考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。

二点目に、母子健康手帳交付の際に、出産や産後に支援を受けられる人がいるかどうかなどの状況がわかるような保健師や助産師による面談を実施することが大変重要であると考えます。

現在、母子手帳は妊婦さんの利便性を考えて、戸籍の窓口や出張所などで交付されていますが、せめて、母子手帳交付の際に産前産後の生活環境がわかるようなアンケートをその場で実施していただき、保健所での助産師などのアドバイスが速やかに受けられる相談体制を整えるべきではないかと考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。

次に、介護予防について、2点伺います。

はじめに、高齢者の居場所づくりについて、質問いたします。

超高齢化が進み、一人暮らしの高齢者や高齢世帯が増加しています。年齢を重ねても元気で生きがいを持ち、住み慣れた地域で、いきいきとくらしていきたいと願う高齢者は、たくさんいます。そして、身近な場所で、近隣の方と接点を持ち、何時でもお互いの様子を確認して、助け合い支えあうことができる「人と人とのつながり」の形成は、介護予防を考えていく上で、大変重要な生活支援に位置づけられると考えます。

しかし、現状では、家に引きこもりがちになり、地域で孤立してしまう恐れも危惧されます。

そこで介護予防の観点から、日中、高齢者が気軽に立ち寄ることができ、お茶を飲みながら、おしゃべりをして、楽しく過ごすことのできる「居場所づくり」を推進していくことが必要であると考えます。

越谷市では、行政が中心となり、商工会と社会協議会の協力を得て、蒲生駅前商店街の空き店舗を活用した「ふらっとがもう」が平成23年にオープンしています。ここでは、地域にふれあい助け合いの輪を広げ、賑わい創出のための「越谷地域支えあいサービス事業」を行っています。この事業では、高齢者や育児中などの支援が必要な方に、地域の事前に登録した元気な高齢者がサポートスタッフとして、日常生活のちょっとしたお手伝いを行うことで、サポートスタッフに対し謝礼として500円分の「支えあい商品券」を、地域の商店で使用して頂くことで、商業振興にもつながっているとのことです。

また、ここでは地場産の新鮮野菜の販売、手芸品の展示コーナーや、気軽に立ち寄れる談話コーナーを設け、交流の場所となっています。

昨年は2店舗目が誕生し、2015年度には、3か所目が開設予定とのことで、高齢者の居場所づくりの拠点となっています。

また、新潟県内では「地域の茶の間」といわれる居場所が、2000ヵ所以上あり多くの高齢者の交流の場になっています。この「地域の茶の間」は、新潟市在住の女性が始めた有償の助け合い活動の事務所が、自然発生的に子供からお年寄りに至るまで、世代を超えた交流の居場所となったことから始まりました。平成15年には常設型の「うちの実家」が開設され、ここに行けば、何時でも人に会い、話ができ、人と一緒に食事をとることができます。

また、一人暮らしの男性が、地域から孤立しやすい傾向にある状況がありますが、ボランティアなどの社会的活動も行っていますので目的が明確で、人付き合いやご近所づきあいが苦手な方でも「ほかの人の役に立てる」ということから男性の参加意欲が高いとのことです。

今後、高齢者の社会参加型の活動を進めていくうえで、様々なきっかけづくりが大切になってくると思います。

本区においても、社会福祉協議会において、ボランティアや地域での自主的な活動に対して支援を実施して頂いていることは十分認識しているところであります。

しかし、継続的で、日中つねに立ち寄ることができ、お互いの状況を確認し合える「高齢者の居場所づくり」の推進が必要であると考えます。

区内各地域においても、自由な発想で取り組んでみたいと思う方々もおり、日中気軽に通える場所がほしいとの高齢者のニーズも高まっているところであります。

国では介護保険制度の改正に向けて検討が進められ、その中で地域包括ケアシステムを整備していくとしています。

本区においても、それを受けて、現在新たな、高齢者保健福祉計画策定がなされていくところでもあり、今後、地域力を活用した高齢者の生活支援の場として、「高齢者の居場所づくり」の自発的な活動の支援についてすすめていくべきであると考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。

二点目に、認知症早期発見のためのチェックサイト導入について伺います。

近年、認知症が原因で、行方不明者が増加し、数年ぶりに発見されたというニュースが報じられました。
認知症は、早期発見・早期支援が重要なカギになることは言うまでもありません。

都の新たな推計によると、都内の認知症高齢者は、38万人を超え、平成37年には約60万人に急増するとのことです。

こうした中、東京都では、先日、認知症の早期発見、診断、対応を進めていくために、東京都健康長寿医療センターの知見を活用して、「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」を作成し、認知症を簡易チェックできる仕組みをつくり、ホームページに掲載しています。

今後このチェックリストを掲載したパンフレット「知って安心 認知症―認知症の人にやさしいまち東京を目指して」を区市町村に配布し、地域における認知症の普及啓発の取り組みをしていくとのことです。

また、国分寺市では、今年の5月29日より、認知症簡易チェックサイトの導入開始をいたしました。

このチェックサイトは、パソコンや、スマートフォンなどで簡単に認知症チェックができ、また予算的にも、人口規模によって、違いますが、初期設定費用が、2万~5万円、毎月の管理費用は、2千円~5千円と低額になっています。

東海大学医学部の市村先生の監修に基づき、公益社団法人認知症の人と家族の会の協力により作成されたもので、家族向けの「これって認知症?」とご本人向けの「私も認知症?」があり、簡単な設問に答え、結果によって「心配な方は、こちらへ相談してください」と地域包括支援センターや関係機関が明確に表示してあり、連携が取りやすくなっています。

認知症のごく初期と認知症の始まり、あるいは、進展する可能性のある状態などを、本人とご家族が簡単に予測できるように考案されています。

認知症への正しい認識や理解を深めていくためにも、大変有効なツールであると考えます。そこで、本区においても認知症簡易チェックサイトを早急に導入すべきであると思いますが、区長のご所見をお伺いいたします。

次に、移動式赤ちゃんの駅について伺います。

近年、野外などでの各種イベントや防災訓練のときなど乳幼児を連れたお母さんの参加しやすい環境をととのえるため、授乳やおむつ替えに、自由に使える移動可能なテントや折り畳み式のおむつ交換台などの「移動式の赤ちゃんの駅」を無料で貸し出す自治体が増えています。

最近、乳幼児を連れたお母さんにとって外出する際に、なにかと気を使うことがたくさんあり、授乳のときくらい安心してリラックスできる場所があるといいなという声を伺います。

またイベントなどで授乳やおむつ替えのスペースが確保されていれば、気軽に参加しやすいということでした。

大阪狭山市では、市内で開催されるイベントや小学校の運動会などに、乳幼児連れのお母さん方から、安心して参加できると喜ばれているそうです。

橋本市でも、平成25年秋より導入されています。

横浜市の元町商店街では、2009年2月から、土日祝日など商店街の歩行者天国が実施される時間帯に移動式の授乳・おむつ替え専用車両「ポペッツタウン号」が登場しているとのことです。マイクロバスを改装したもので、社内にはカーテンで仕切られた授乳コーナー2つ、おむつ替え用ベッド2つのほか、ミルク用のお湯も用意されており、無料で利用できます。

また区としては、震災など緊急時の備蓄品にパーテーションなど、プライバシーを確保できる備蓄がされていることは認識していますが、緊急時においても、赤ちゃんづれのお母さんにとって、おむつ台があり、安心して授乳できるスペースがあり、一定のプライバシーが保たれるものとしては、大変有効と考えますが、このような野外や屋内でも、お母さんと赤ちゃんのプライバシーを保つことができ、安心して利用できる「移動式の赤ちゃんの駅」導入について、区長のご所見をお伺いいたします。

次に、待機児童対策について伺います。

昨年より、阿部首相は保育需要がピークを迎える2017年度までに待機児童をなくす方針を打ち出しております。2015年度からは、子ども子育て新制度がスタートする予定で、それまでの2年間でできる限りの手を打つということです。保育需要と供給に開きが生じていることから、本区においても、共同型家庭保育の拡大や、小規模保育の誘致など、積極的に取り組んで頂いていることは高く評価しております。

しかしながら、本年4月の時点でも残念ながら待機児童が出ている実態があります。今後も景気の動向とワークライフバランスのニーズの高まりからも待機児童が増加し続けることは必至であり、今後の対策は、緊急の課題となっております。

さてデンマークでは、出生率が、先進国でも上位にあり、子どもたちは、「望まれて生まれ」皆、「国の宝である」「次の社会を担う大事な人材である」との国の方針を立てています。女性の就労率も約78%と世界的にトップであることから、安心して子育てができるシステムが確立されています。

まず、母子手帳が交付されますと、すぐに保健師が動き出し、初産の場合、出産予定日前に家庭訪問して出産前の心得などを伝え、同時に、保育園の希望先を聞くところから始まるそうです。1歳までに7回訪問するとのことです。もちろん、待機児童はゼロを目指していて、希望する保育園が定員を超えているときには、自治体が責任を持って保育ママを斡旋し、森の幼稚園なども活用します。

早め早めの、ニーズ調査により、人口推計と保育需要を先取りする制度になっています。

只今ご紹介しました「0歳時の人口推計」は、これから生まれるお子さんの推計ということです。
たとえば、待機児童対策の一つの打開策として、母子健康手帳の交付数などを活用するなど、あらたな、取り組みが必要ではないでしょうか。

そこで、本区においても、今後の待機児童対策を速やかに進めるにあたり、少しでも早く保育ニーズを把握する手立てとして、母子健康手帳の交付数を活用することについて教育長のご所見をお伺いいたします。以上で質問を終了します。