平成24年度決算特別委員会総括質問


平成24年度決算特別委員会総括質問

  1. 文化施設入館増の取り組みについて
  2. 大人の発達障害の取り組みについて

台東区議会公明党の松尾伸子です。
まず、質問に入る前に、一言申し上げます。
このたびの台風26号により、伊豆大島では甚大な土砂災害が起こり、多くの方々が亡くなられております。また、伊豆大島以外にも土砂災害、水難事故で亡くなられた方がおります。お亡くなりになられた方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。
また、被災された皆様、ご関係の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
そして、被災地の復旧復興が一日も早いことを願ってやみません。
今般の災害を教訓に、災害は、想定外のことが起こることを前提に、本区でも、地域ごとに、地区ごとに、解決すべきどのような課題があるかを明確に把握し、災害対策、防災対策を検討し、一つ、また、一つと、想定外を無くしていく懸命の努力が必要であると考えますので、今まで以上の取り組みをお願いいたします。

それでは、質問に入らせていて頂きます。
大きく二点質問いたします。区長のご所見を伺います。
まず、

1点目は、文化施設入館増の取り組みについてです

台東区は、昔より文化行政推進区としての誇りも高い地域であります。
このほど、10月29日に、リニューアルオープンされる朝倉彫塑館をはじめ、区内には、貴重な文化施設が数多く点在しています。
その中で、区としては、五館共通入館券などの発行を実施し、入館率向上に努めているところです。
現在は、奏楽堂が改修中ですので、四館共通券を800円で販売していますが、使用率は、0.6%です。
それに比べて、東京都の実施している、「ぐるっとパス」は2,000円で都内の江戸東京博物館をはじめとする文化施設に使用でき、「ぐるっとパス」の区内施設での使用をみると、書道博物館と一葉記念館と下町風俗資料館での使用率は6%となり入館率向上にとても有効であることがわかります。
しかし、区の税外収入として重要な文化施設の使用料の増収を図るためには、区独自の入館率向上の施策が重要であると考えます。
他の自治体のリピーターを増やす取り組みでは、地域に根差す文化施設となるべく、多くの愛好家、サポーターを作っていくことができる「友の会」会員制度の設置や年間パスポート発行などの取り組みが実施されています。

例えば、富山市では平成22年10月1日より誰でも購入可能で市内13施設で利用できる、博物館等年間共通パスポートと3日間共通パスポートを発行し、それぞれ1,000円と700円で販売しています。販売場所も対象施設のほか、観光案内所、ホテル、行政の窓口でも購入できます。

また、大阪市立自然史博物館や川崎市市民ミュージアム、十日町市博物館などでは、友の会が結成されています。
各地域、一般会員、学生会員、家族会員、などを設けて、情報誌の配布や、施設利用の割引など行っています。
十日町市博物館の開館当初からの基本理念は、「市民生活に密着した実物教育機関として、何時でもだれでも見たり調べたりできる、市民のための博物館」ということです。
大変大事な理念だと思います。
いずれも、各文化施設へのリピーターを増やし、地域への愛着や文化や歴史への興味を起こさせるきっかけになり、地域のネットワークを強くする取り組みであると考えます。

本区には、全国に、アジア諸国をはじめ世界に知られた貴重な所蔵品を所蔵する文化施設があり、全国に愛好家が存在することは間違いありません。
実際、朝倉彫塑館のリニューアルオープンを楽しみにしている区民の皆さんはたくさんいます。
この本区の宝である文化施設を見るためにいらっしゃる来街者の滞在時間が延長することにもなるでしょう。

リピーターを増やし、区立の各文化施設の特性を生かして、入館者増に向けた取り組みをどのようにお考えいただいているか、区長にお伺いいたします。

様々な取り組みをして頂いていると思いますが、

今後、各施設の年間パスポートや友の会の取り組みを積極的にお考えいただくことを要望して、

2点目の質問に移ります。

大人の発達障害の取り組みについてお伺いいたします

近年、人とのかかわりがうまく持てず、いじめにあったり、大人になっても社会に適合できない、そのために就労が不安定になったり、ひきこもり、うつ病になってしまうなど、問題を抱えても相談するところもわからず、苦しんでいる若者が増えています
その一因として、発達障害が関係している可能性が指摘されています。
児童虐待についても、同様です。発達障害のあるお子さんのその特性ゆえに親御さんが育てにくさを感じ、追い詰められてしまい虐待に及ぶということもあります。もしその時に、発達障害のことを知り、対処法を聞いていれば、深刻化しなかったかも知れません。

幼児期など早期の健診では発見されずに、学童期は特に問題も見られずに、青年期に入り、大学入学や就職をきっかけにして先ほどのようなひきこもり、うつの問題が起こり、関係機関を受診してみると、いわゆる「大人の発達障害」ではないかと診断を受ける方がいます。
発達障害児に対する社会的認識は、近年急速に進んできておりますが、成人の発達障害に関しては、まだまだ社会的認知に乏しく、その支援体制もこれからという感じで、早急に対策を講じる必要があるのではないかと感じています。

発達障害は、その多くが先天的な脳機能と認知機能の障がいであります。そのため、コミュニケーションや社会性、行動などに障害が生じます。

発達障害者支援の先進自治体の一つである佐賀県内で活動する発達障害者とその家族を支援する民間団体であるNPO法人「それいゆ」では、就労移行支援事業、生活支援事業などを行っていますが、法人の江口理事長のお話の中に

「例えば、理数系の博士号取得者が、物を10個正確に数えられないこともあります。高知能でありながら、しばしばごく単純なことができないのが発達障害。」とあり、学校卒業まで大きな問題もなく過ごしてきた高学歴、高知能だが発達障害のある方が、しばしば職場不適応に陥る原因として、職場での態度やコミュニケーションの問題のほかに、仕事上のごく単純なことができずに、失敗経験を重ねてつまずくということが大いにあるということです。

発達障害の中でも、広汎性発達障害と呼ばれるものは、自分の意思を伝えることが苦手であったり、行間のニュアンスを推し量ることが困難であったりします。また、相手の感情を想像することや臨機応変な対応が苦手で難しかったり、強いこだわりがあるというような特徴が顕著で、そのために対人関係や社会生活に問題を抱えることが多くなります。この広汎性発達障害の定義では、自閉症と同じような特徴がある、アスペルガー症候群が含まれています。

しかし、アスペルガー症候群は、自閉症とは異なり、言葉の発達の遅れと知的障害を伴わないので、表面的には、「コミュニケーションは流暢であるが、言葉の裏のニュアンスを理解できない」などが特徴として現れます。

このようなことから、障がいが比較的発見されにくいので、周囲からは、「わがままな人」「変わった人」などの否定的な評価を受けがちで、理解されるこなたく、適切な対応を受けることもなく、本人はとても傷つきます。そのため、本人も周囲も障がいだと気づかぬまま、うつなどの二次障害へと深刻化しやすいのです。

また、複数の発達障害が併存する方もいて、百人百通りですから、個々にきめ細かい支援が必要なのです。

発達障害者支援法では、就労支援に関する規定や、成人を含む発達障害者の地域支援に関する規定などが定められてはおりますが、全体的には、児童の発達障害の早期発見、早期の支援に重点が置かれていると思えます。
もちろん、

早期発見、早期支援はもっとも重要な事でありますが、せっかく早期から支援を受けても、18歳で区切られ、成人期に達した途端に支援が途切れてしまっては、結局、社会に適応できなくなる恐れがあるのです。

さらに、早期発見・早期支援を受ける機会がなく、成人した発達障害のある人が、それとは知らずに、人一倍苦労しながら成長し、成人後も引き続き、発達障害ゆえの苦労を抱えるのに加え、精神障害等の二次障害を患い、過去の心的外傷にも悩まされる。とてもつらいことと思うのです。

最近、これらいわゆる大人の発達障害に悩まれる方々とそのご家族からの、支援を求める切実な声を伺う機会が大変増えてきました。
先述のNPO法人「それいゆ」の基本理念は、「乳幼児期から成人期までの全ライフステージに切れ目なく対応した継続的な支援を行う」 ということです。発達障害を持っていても、その方々が持つ本来の能力を発揮して、自分らしく生きることができる環境を整えて、支援を提供する。
このことが最も大切なことであると私は考えています。

本区では、大人の発達障害への取り組みとして、平成24年12月より、保健所内にて、心理士による「発達障害専門相談」に加え、従前より、医師による「心の相談室」などを実施しています。
保健所では、発達障害かどうかわからない方からの相談も含めて、随時、常勤の保健師による受け付け体制をとり、関係機関への紹介などの体制を整えて頂いているところです。
周知においても、「広報たいとう」やホームページなどで、詳細に紹介して頂いております。
しかしながら、相談しやすい、相談窓口がわかりやすいという観点からは、区民目線では、まだまだ敷居が高いように感じられてなりません。

「区民にわかりやすい、相談に行きやすい」という行政サービスのあり方を考えた時、大人の発達障害に関する相談窓口や事業の内容の周知について、区民が利用しやすいように周知・広報媒体での事業紹介や庁舎・施設の案内標記をわかりやすく工夫する必要があると考えますがいかがでしょうか。

区長のご所見をお伺いいたします。
また、

本区では、年に一回、発達障害についての講演会を実施しておりますが、発達障害は、周囲の方々に、発達障害とはどういうものなのか、適切な対応の仕方はどうすればいいのかなど、理解を深めていただく大事な機会であります。
私が、講習会を受講した際に経験したのですが、講師ご自身も発達障害を抱えながら、発達障害の研究に携わり、ご自分の体験を通しながら、講演してくださるという、研究者もいらしゃいます。
成人期の発達障害についての講習会の中で、このような講師を検討し、なおかつ、講習会の開催回数も充実させていくことが必要であると考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。

先ほども申しあげましたが、

今後の発達障害支援のために、あえて、指摘させていただきますが、やはり、乳幼児期から成人期までの全ライフステージに切れ目なく対応した継続的な支援を行う。発達障害を持ったままで、本来の能力を発揮して、自分らしく生きることができる環境を整え、支援を提供する。このような取り組みが、様々な社会問題解決の一つの方途を提示する契機になるものと確信しています。

最後に、発達障害者支援法にいう都道府県の発達障害者支援センターと視点を異にし、区として、発達障害に特化した乳幼児から青年期までの支援体制を整えたセンターを設置し、発達障害児から青年期の発達障害者までの一貫した体制作りを目指していくことが最も大切であると考え、その実現を強く要望いたします。

以上で総括質問を終了いたします。