令和5年決算特別委員会総括質問


公明党の松尾伸子でございます。

1.防災士の活動支援について

2.公衆浴場の活用について

大きく2点にわたり、区長にお伺いいたします。
初めに、防災士の活動支援について伺います。
関東大震災より100年を迎えた本年、近年ますます気候の変動は著しく、私たちは様々な災害に見舞われる可能性に日々さらされている状況です。いよいよ今まで以上に区民の防災意識を高め、一人でも多くの方が自助・共助の担い手となる取組が必要になってまいります。以前、神戸市人と防災未来センターで次のような言葉を伺いました。地域の防災の担い手は老若男女、発災時にその場に居合わせている人たちであると強い語調で述べられていたことが大変胸に響きました。いざ災害が発生したとき、大規模な停電の後、電気が復旧し、再び通電した際に通電火災が起こりますが、その通電火災防止の取組はさらに重要になると明らかになりました。また、台風、豪雨災害、直下型地震などに備え、想定以上の大災害に対して被害を最小限にすること、すなわち減災対策がいま一度重要になってまいります。特に阪神・淡路大震災、東日本大震災以降、大災害からの教訓によって自助・共助の重要性が注目されております。
本区におきましては、以前、コミュニティ防災の取組として、区内で想定される水害全般に対して、地域の避難計画を検討するワークショップを実施するなどの取組がなされています。地域の防災の担い手である自主防災組織や消防団などが連携力を高めて、防災力向上の底上げを図る体制を構築することを目的としています。水害に限らず、地震、火災、台風、土砂災害と、起こる災害によって避難の仕方も避難場所も全て変わってくるということを区民の皆さんにしっかりと知っていただき、理解していただくことは大変に重要です。まずは、避難行動は難しいということを知って、言わば避難行動の学力をつけていくことが肝腎なのだと考えます。
また、家庭における防災意識についての課題もあります。大手玩具メーカーのバンダイが子供の防災対策について2019年7月に行った調査によりますと、災害が起きたときの集合場所や連絡手段について子供としっかり話し合っている家庭は、僅か5.9%という結果でした。約7割の家庭が、何らかの防災対策はしているが、災害時について子供と話し合っているかどうかについては、全く話し合ったことはない、あまり話し合えていないという意見が多数を占めていました。話し合うきっかけは、学校の防災訓練や他の地域の災害があったときが多いということです。家庭での防災・減災の取組も、より一層自助の意識を高める必要があります。
一方、全国的に防災の担い手の一つとして、防災士の資格取得が進んでいます。防災士資格取得に関しては、2019年に一般質問させていただきました。以前より何人かの議員からも訴えがあり、台東区において現在、取得費用を全額補助していただいていることは大変評価しております。改めて申し上げますが、防災士とは、日本防災士機構による講座履修後、筆記試験の合格と救急救命講習を修了して取得できる資格です。また、防災士の取得を後押しし、防災士を養成する取組は、地域の皆さんの防災意識を高め、防災力を向上させるきっかけとして有効であると考えます。そして、防災士中心に地区の防災計画を立てていくことや、防災訓練の折に積極的に参加し、リーダーシップを取っていただけるような仕組みづくりが必要です。
台東区において、防災士の資格取得費用助成の過去3年の実績では、令和2年度は1件、令和3年度は4件、令和4年度はゼロ件でした。本年度は3件と、再び増えていますが、コロナ禍であったためとはいえ、周知が足りているとは思えません。また、女性・若者の割合も低いように思われます。いま一度、啓発活動に工夫が必要であると考えます。とはいえ、自治体の後押しにより、2023年9月末現在での全国の防災士認証登録者数は26万3,948人、東京都が最も多く、2万1,922人、台東区では254人いらっしゃいます。地域の防災力向上の要として、今後も防災士を目指す方々は増加していくと考えます。
防災士に期待される役割として、1つは、防災・減災に関する知識や技能を生かして、自分や家族の身を守る自助としての役割、そして、初期消火や避難誘導、避難所開設など、発災直後の現場での共助のリーダーシップを発揮することが可能になります。この自助・共助の役割を果たすことができる防災士などの地域防災の担い手となる存在を増やすことは、喫緊の課題となります。近年、多発化し、激甚化する自然災害と、それに対する備えと、二次災害への対策が重要になってまいります。
防災士資格取得の講習時に学ぶ知識の中に、災害時の流言があります。災害時には、必ずといってよいほど流言が飛び交います。流言、すなわち証拠や根拠が不確実なうわさや情報がSNSなどで拡散されていくものですが、正確な情報が欲しいときに、それが得られず、不安が広がる中で、人々の中から善意の拡散が起こり、さらに流言が広がるのです。このような流言が生み出されるメカニズムを知識として知っていれば、政府や自治体等の正確な情報によって、混乱せずに行動することができると考えられます。そして、災害情報は常に更新されていきますので、それらの最新情報を区民にいかに伝えていくかが課題だと考えます。
また、防災士の資格を取得しただけでなく、常に学んでいける環境整備も必要です。今後の防災士の活動支援についての展開をお伺いいたします。
また、せっかく資格取得しても、その後の活動が個々に委ねられていて、思うように知識や技能を生かせていない現状が見受けられます。防災士をいかに活用するかという視点が自治体に求められていると考えます。そこで、区として、区内の防災士の把握ができるよう登録制度を検討し、防災士同士の情報連絡会や知識向上のフォローアップ研修会などを開催してはどうでしょうか。区長のご所見をお伺いいたします。

○委員長 危機管理室長。

◎杉光邦彦 危機管理室長 ご質問にお答えいたします。
防災士は、地域防災の中心的な役割を担い、発災時にはリーダーシップを発揮して災害対応を行うなど、重要な存在であると認識しています。区では、防災団や避難所運営委員会等から推薦された方を対象に、資格取得に関わる費用の全額を助成し、防災士の養成を行い、地域防災力の向上に努めています。
今後は、防災士が持つ知識や技能を活用し、地域の防災活動に継続して取り組めるよう、委員ご提案の登録制度の導入や研修等の実施について検討してまいります。

○委員長 松尾委員。

◆松尾伸子 委員 大変前向きなご答弁をいただきまして、感謝申し上げます。防災士同士の連携が本当に今後もさらに活発に進められますよう、本当にまた区の皆さんの防災意識がより一層高まる、そういう取組がこれからも進んでいきますようにお願い申し上げます。
それでは、次に、公衆浴場の活用について伺います。
公衆浴場は、江戸時代から銭湯として親しまれ、長い間、地域住民の健康維持と保健衛生を担ってきました。最盛期では、全国に2万3,000軒もの銭湯があったとのことです。しかし、時代の変化につれ、家庭での風呂設備の保有率も上がる中で、減少の一途をたどってまいりました。台東区でも、10年前までは32軒ほどあった銭湯が現在では21軒と、11軒減少してしまいました。23区の中では多いほうだとはいえ、地域の中で1軒、また1軒と、営業休止や再開が不可能な状態で廃業せざるを得ない銭湯が増えています。毎日通っていた近所の銭湯が突然使えなくなってしまいますと、生活のリズムが狂います。高齢者は特に不便を感じ、不安になってしまうのは当然のことです。一般公衆浴場、いわゆる銭湯は日常的に生活に密着した住民サービスを提供する場であり、また、健康づくりの拠点となる場所であり、なおかつ、介護予防の拠点ともなり得ると考えます。高齢化が急速に進行する現在、高齢者の介護予防は早急に効果的な対策が必要だと考えます。また、年齢を重ねても元気で生きがいを持ち、住み慣れた地域で生き生きと暮らしていきたいと願う高齢者はたくさんいます。そして、身近な場所で近隣の方と接点を持ち、いつでもお互いの様子を確認して、助け合い、支え合うことができる人と人とのつながりの形成は介護予防を考えていく上で大変重要な生活支援に位置づけられると考えます。しかし、現在では、家に引き籠もりがちになり、地域で孤立してしまうおそれも危惧されます。そういう意味では、銭湯は介護予防の観点から、ひきこもりを防ぐ通いの場でもあると考えます。
全国浴場組合が2021年、温泉療法専門医で、東京都市大学の早坂信哉教授の指導の下、ふだん銭湯に通っていない平均年齢約80歳の高齢者26人が定期的に銭湯に通うことによる効能を調査したところ、調査前後の体力測定で運動能力の向上が見られたということです。入浴習慣・温泉医学研究の第一人者の早坂教授は以前より、1万人以上の高齢者を調査していく中で、毎日湯舟に入浴している人は3年後の要介護になるリスクが29%も低くなることが分かり、高齢者の入浴習慣は、入浴時の事故などのリスクに十分注意することを前提に、介護予防対策としてより活用していくべきだとおっしゃっています。銭湯に通うことで定期的に外出の機会を得られ、徒歩で通うことで運動不足を解消することができますともおっしゃっています。以前、会派の中澤議員からも介護予防の観点から銭湯の活用について提案がありましたが、このように生活習慣病、介護予防の活動に適し、地域の交流の場として銭湯の活用をさらに前進させていただきたいと思います。高齢者が1人で入浴するリスクは、入浴関連事故死年間1万人以上に上ると言われていることから、高齢者が安心して入浴できるように、例えば全公衆浴場へのAED設置などの対策を取る必要があると考えます。
また、現在、65歳以上のお一人で入浴動作可能な要支援2までの方対象に、銭湯に見守り支援員を派遣している自治体もあります。私も先日、続けて独り暮らしの高齢の方お二人から、1人で入浴動作はできるものの、不安があり、結局シャワーで済ませてしまっている。ゆっくり湯舟につかりたいとの切実なご相談がありました。私は、このご相談を伺い、とても切ない気持ちになりました。昔から日本人が体を清め、血行を促進し、たまった疲労を取り除いて、心身ともに健康になるという基本的な生活習慣が脅かされていくと感じました。
また、たとえ自宅にお風呂があっても、自分1人で湯舟に入ることが怖くて、長い間、自宅の浴槽を使用していない方も少なくありません。また、銭湯に通うのに、バスや何人かで連れ立ってタクシーを使っている方々もいます。銭湯に通うとき、歩行に不安がある方もいます。いずれにいたしましても、早急な対策が望まれます。
そこで、台東区では高齢者へ入浴券の配布を行っていますが、高齢者が入浴機会を上げるためには、自己負担金額を現在より上げても、利用日数を増やすようにすべきだと考えます。いかがでしょうか。また、銭湯を活用して、多世代で集い合い、ゲーム大会、また、レクリエーションなど行えるようにしてはいかがでしょうか。また、区が銭湯と協力し、設備のバリアフリーや支援員の配置などの高齢者が安心安全で入浴できる対策をしながら、生活習慣病や介護予防の活動に適した場として銭湯を活用していくことは大変有効であると考えますが、区長のご所見を伺います。

○委員長 区長。

◎服部征夫 区長 ご質問にお答えいたします。
まず、高齢者入浴券の拡充ということでございます。
高齢者の方々が公衆浴場を利用することは、社会参加を促進し、そしてまた、健康寿命の延伸の一助になるものと私も認識しています。本制度については、さらなる健康増進の機会の創出などの視点から、利用枚数の増加、あるいは対象者の拡大などについてご要望をいただいており、現在、浴場組合と協議をしながら、松尾委員ご提案の内容も含め、様々な観点から鋭意検討を進めているところです。
また、各世代が集まり、交流イベントを行うことは高齢者にとっても本当に有益であるため、公衆浴場での実施の可能性について、浴場組合と協議を行ってまいります。
次に、介護予防等の活動の場としての活用についてです。
高齢者が安全安心に入浴できる対策については、他区の取組も注視するとともに、各種助成などを通じて公衆浴場の取組を支援してまいります。
また、今年度より、2か所の公衆浴場で開始した体操と交流を行う通いの場活動を支援するなど、引き続き介護予防事業での活用を進めてまいります。

○委員長 松尾委員。

◆松尾伸子 委員 大変また前向きなご答弁を区長からいただくことができて、本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。
この支援員配置に関しまして、これはやはりシルバー人材センターの皆さんですとか様々な地域の力をいただいて、ぜひこれも積極的に推進していただければなと、ご要望させていただきます。
様々な取組がさらに大きく進むことを心よりお願い申し上げまして、私からの質問を終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。

○委員長 松尾伸子委員の質問を終わります。