令和3年 第4回定例会一般質問(全文)


1.初めに、ウォーキングサッカーについて区長に伺います。

近年、健康増進や仲間づくりに最適なウォーキングサッカーの本格的な普及活動に注目が集まっています。

ウォーキングサッカーとは、一切、走らず、接触もしてはいけない。歩きながらプレーをするサッカーのことです。

発祥の地はイングランドで、50歳以上のシニア世代を中心に1200以上のチームがあります。

現在、欧州や中東、東南アジア、アフリカなど世界53か国で親しまれています。日本では、2017年に一般社団法人日本ウォーキングサッカー協会が設立されて以降、急速にひろがりつつあります。

年間130回以上の体験会や講習会を通して競技人口は急増し、現在全国で、約100チーム以上が活動し約1万人がウォーキングサッカーを楽しんでいます。

小さな子供から高齢者、障害のある方も一緒に楽しめるため、地域コミュニティづくりやスポーツを通じた健康増進を目指す全国の自治体や企業や団体、Jクラブなどで積極的に取り入れられています。

私も、先日、体験会に参加させていただきました。2時間の体験コースの半分は、ひたすら正しい歩き方の練習に充てられています。

コートの端から端まで何往復も様々なウォーキングのメニューを実践する全身運動で体はホカホカと温まり、息が上がるほどの運動量でした。残りの1時間は、2チームに分かれて、実際に練習試合を通して、初めての人もルールが全く分からない人も実践的に動きの中でサッカーのルールを覚えていきます。

ウォーキングサッカーは、歩きながらプレーするため、一般的なスポーツに比べ筋肉や心拍などに強い負荷がかからず、長時間かけて緩やかに体を動かすことができます。自分のペースで行う有酸素運動で筋力や持久力が高まり、脂肪を燃焼し、軽いジョギングよりも運動効果があるといわれています。また、正しい歩き方をマスターすることにより、ひざ痛の軽減や転倒防止など日常生活でも効果が期待でき、健康寿命を延ばすことにもつながると考えられます。

日本ウォーキングサッカー協会の佐藤理事統括執行役員は、「どんなスポーツでもプレーヤー同士のコミュニケーションが大切。多世代が一緒にプレーできるウォーキングサッカーでは、思いやりを持ってプレーすることが大切で、とりわけ自分も味方も走ることができないからこそ、名前を呼びあい、意思疎通を図ることでチームワークが生まれる。自分のペースで体を動かしながらコミュニケーションを促進するレクリエーションとして高く評価されており、チームスポーツの楽しさを知り、仲間づくりのきっかけとして行ってほしい。」と仰っていました。公認スポーツドクターで、ねづクリニック院長の根津桂子先生は「歩くことを基本にしたウォーキングサッカーは限界点を目指さずとも仲間とボールを回しあいながらゴールを目指す中で、私にもできた、楽しかった!という満足感によって得られるドーパミンというホルモンが分泌され、また、頑張ろう、続けてみようという運動習慣に繋がっていくところがこの競技の良いところである」と語られています。

松戸市では、松戸市サッカー協会等が主催し、本年5月29日に「年齢、性別、障がい、人種などに関わりなく、だれもが。いつでもどこでも」と銘打ちウォーキング健康プログラム&サッカー体験会、多世代交流会を開催しました。当日は、4歳から76歳までの親子3世代の参加者が一堂に会しウォーキングサッカーの楽しさや効果を心と体で実感し、これからの地域共生社会の実現に向けて、介護予防や地域コミュニティを創出する足掛かりとしていくとのことです。

そこで、台東区でも、まずは、パンダ広場や各スポーツ施設などでで、ウォーキングサッカーのデモンストレーションや体験会を開催してはいかがでしょうか。そして、健康増進・認知症予防、介護予防など運動予防医療として、また、多世代交流やコミュニティづくりのため、ウォーキングサッカーを健康づくり施策や地域共生社会づくりの施策に取り入れてはいかがでしょうか。区長のご所見をお伺いいたします。

 

2.次に、帯状疱疹ワクチンについて伺います。

帯状疱疹は子どもの時などに水痘・帯状疱疹ウイルスに感染し水ぼうそうとして発症します。水ぼうそうが治った後もウイルスは脊髄から延びる神経節に潜み、加齢や疲労、ストレスなどにより免疫力が低下するとウイルスが再び活動を開始し、増殖したウイルスは、神経の流れに沿って神経節から移動し皮膚に達して、ピリピリチクチクといった神経痛のような痛みや焼けるような痛みを伴い、発疹が帯状にあらわれます。発症率は50歳以上で増加し、加齢に伴いさらに増加します。日本人の80歳までで約3人に一人が帯状疱疹を発症するといわれています。

最近では帯状疱疹の治療薬としてウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が登場し以前に比べて帯状疱疹の治療は容易になりましたが、治療が長引くケースや治った後も長期間痛みが残るケースは少なくありません。特に高齢者では神経痛が残り易く50歳以上の患者の2割が移行するとのことです。

このような後遺症により日常生活に支障をきたすことがあるため発症を予防することが重要です。

また、治療が長引き、皮膚症状が治った後も長期間にわたり痛みが残ってしまう一因として、初期症状では痛みなどに対する感じ方が人によって違い発症に気が付かず治療が遅れたことによるとのことですので、早期に発見・治療することが大切です。

いずれにしても帯状疱疹はワクチン接種で予防ができます。病気の発症や重症化を抑えるためにも、早期に積極的なワクチン接種を進めることが重要であると考えます。そこで、帯状疱疹発症率が上がる高齢者へのワクチンの接種費用の助成を推進すべきと考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。(現在、23区では文京区のみ、なお、平成元10月から助成開始。全国的には、名古屋市、能代市、国東市、刈谷市など近年増加中)

 

3.三点目は、台東区ネウボラの整備についてお伺いいたします。
平成27年度第4回定例会一般質問において、産前産後のトータルケアについて質問いたしましたが、高齢出産する方が増え、産後を支える両親も当然高齢化しており、なかなか援助が受けにくいケースは依然として多くなっています。産後直後は、急激な母体の変化と生活環境の変化のなかで、母子が孤立しがちであります。ゆっくりと話を聞いてもらえる相談相手も少なく不安な状況の中では、育児においても孤立感をつのらせて、ひいては虐待などへの移行リスクの要因となる可能性を秘めています。
産後鬱や虐待などを未然に防ぐためには、産前から、産後直後の環境整備を図り、また、その後も切れ目のない育児ケアが必要であることはご承知のとおりです。
本区では、産後ケアの実施、早期の赤ちゃん全戸訪問や母子手帳交付の際に産後の環境を整えるためのアンケートを実施し、ハイリスクの可能性のある母子のケアに力を入れて頂いているところです。しかしながら、産前から病院や役所、また、保健所と必要に応じて様々な機関に足を運び、出産後も然り、行く先がいくつもあり、そのたびに相談内容や、子どもの状況を一から説明しなければなりません。やはり産前産後から就学時前。そしてその先も切れ目のない一貫した総合的なサポート体制(当然、継続的な情報連携・引継ぎ・集約を含む。)を整えることが重要です。

加えて、安心して子を産み育てられる環境を整えることは、少子化の歯止めにもなることは言うまでもありません。
現在本区では、3か所のこども家庭支援センターにて、18歳までのお子さんの相談支援を実施しています。しかし、更なる周知が必要ですが、地域の偏在もあり、利用者の利便性を考えると、課題があると思われます。
国の子ども子育て支援新制度のスタートにあわせ、東京都では妊娠期からの切れ目ない支援体制を構築するための補助事業である、「ゆりかご・とうきょう事業」を平成27年度から開始しました。
妊娠期から子育て期にわたる妊産婦などへ切れ目のない支援を行う自治体に対して、専門職の配置や育児パッケージの配布にかかる経費を補助することにより、取り組みの一層の充実を促すことを目的としているこの事業に対し、区としても活用してはどうかと以前提案させていただいておりましたが、「ゆりかごたいとう」として予算化されたことは評価させていただいておりました。
しかし、都の事業名にならい、折角「ゆりかごたいとう」との事業名で事業を展開するのであれば、台東区の特性を活かした形に進化させてはいかがでしょうか。
そもそも東京都の目指していく「ネウボラ」とは、フィンランドのどの自治体にもあり、フィンランド語で助言の場、妊娠出産・子育てに関する様々な相談に応じる支援の拠点という意味で、妊娠から出産、基本的に就学前までの子育てへの切れ目のないサポートを母子のみならずその家族に対して、総合的な支援サービスとして提供しているというものです。一家族ごとに一人の保健師が継続的に担当し妊娠から出産子育てに関するあらゆる相談にワンストップで対応するため利用者は早期に適切なサポートを受けられます。妊娠の兆候が表れた時からネウボラに行き無料の検査を受け妊娠中に約10回、出産後に約15回子どもが小学校に入学するまで定期的に通い、妊婦健診や乳児検診、予防接種、子育てに関するあらゆる相談を無料で受けることができます。母子の健康のみならずパートナーや兄弟を含む家族も参加できる総合健診もあり家族全体のサポートを目的としています。

都はこの東京版「ネウボラ」ともいうべき仕組みづくりを目指していくということで、23区では、各区が、都の補助事業を活用し、母子保健相談支援事業、産前産後サポート事業、産後ケア事業の3本柱の「ネウボラ事業」を実施しています。保健師が母子保健コーディネーターとして、妊娠期から就学までの子育ての相談に応じ必要に応じて、サポートプランを提供します。また、産後の心身の不調を整え、又、育児不安のある方で家族のサポートが受けられない方に助産院でのショートステイを実施するとのことです。
加えて、国においては、総合的相談支援を提供するワンストップ拠点として子育て世代包括支援センターの整備を、平成27年度中に150か所、その後概ね5年後までには、地域の実情等を踏まえながら全国展開を目指すとして昨年までに1288の自治体に設置されています。 日本では、行政による保健センターがネウボラのような子育て相談の役割を担っていますが、妊娠出産期の妊婦健診は医療機関で受けます。

また、産後1か月以降の乳児健診を地域の保健センターで受け子どもの不調は小児科、母親の不調は内科または産婦人科に相談するというように子育て支援を担う機関が分断されています。

ワンストップで切れ目のない子育て支援が確立していないので、利用者の負担は大きくそれぞれの機関が連携していないので早期から適切なサポートを受けられない事態が発生するという課題があります。

産後の母子に等しく起こりうる可能性のある産後鬱や虐待を未然に防ぎ、安心して子供を産み育てられる環境づくりのため、一つの窓口が子どもの成長に関わる全ての部署を包括し、産前産後、育児、教育の切れ目のないサポート体制を整備し、また、母子のみならず、お子さんを保護するご家族がいつでも子育ての総合的な支援を受けられる拠点として台東版「ネウボラ」をめざし、「たいとう母子健康センター」を整備していただきたいと考えます。

今後、(子ども発達センターとして上野忍岡高校跡地に展開する際に)、重ねて申し上げますが、区民にとっては、わかりやすい相談窓口が必要です。相談のきっかけとして「入り口は一つ」が区民にとって、分かりやすいのです。毎日の育児の中で、悩みを抱え途方に暮れている方々にとって、相談窓口はどこなのか、たどり着くまで大変な思いをしている人は、少なくありません。とくに、お子さんの発達に係わるような漠然とした悩みや、不安を抱えている保護者で、どこへ相談に行けばよいのかわからないという声も聞かれます。
母子健診・相談も、産前産後ケア、子育て世代包括支援センターの機能も備えた、お母さんとそのご家族、お子さんの健全な成長を支援していく母子健康センターとして整備していただきたいと切に願います。
区のことは区役所に行くというように、子どものことなら「そうだ!」と思えるような象徴的な拠点となるよう、区民の誰でもがわかる象徴的な母子健康センターとして設けるべきではないでしょうか。
区長のご所見をお伺いいたします。

 

4.最後に、障害児支援についてお伺いいたします。

現在、障害児支援などを利用したときにかかる費用では、原則、所得に応じた自己負担がかかります。

所得に応じた4つの区分により負担額の上限が定められています。

一部減免制度はあるものの、市町村民税非課税世帯所得割28万円未満までは、9300円、それ以外の一般2は、いきなり37200円となり所得区分に隔たりがあります。

荒川区では、障害児通所支援の利用者負担の軽減を区独自で設定し、利用者負担を10%から3%に軽減することや、所得に応じた区分がいきなり上がる一般2に該当する方への負担上限月額を50%に軽減するなどの対策をとっています。

本区でも独自で何らかの対策をはかってはいかがでしょうか。

先日、重度の障害がある双子のお子さんをお持ちの区民の方からご相談がありました。

上にもお子さんがいらっしゃって、お母さんは、お仕事も諦めざるをえず、毎日、重度障害の双子のお子さんの介護に追われています。

お一人でも大変な子育てを、障害を抱え、しかも双子さんであること。子育てにかかる、身体的にも、精神的にも、また経済的にもどれほどの負担がのしかかっていることか、想像を絶する思いでした。

ところで、日本における多胎児の分娩件数は、2017年には約9900件となっており、分娩件数に占める割合は、2005年の1.18%をピークに2011年は0.96にまで下がりましたが、その後には再び微増に転じ、2017年には1.04%となっています。(平成30年3月みずほ情報総研(株)調べ)

多胎児は単胎児に比べ低出生体重児の割合が多く、低出生体重児特有の支援が必要であり、同時に二人以上の妊娠・出産・育児をすることに伴い、保護者の身体的・精神的な負担や経済的な問題、社会からの孤立など多胎児ならではの支援が必要になってまいります。

本区では、令和2年度より、乳幼児健診など母子保健事業を利用する際の多胎児家庭向けタクシー利用料支給事業や産前産後支援ヘルパーによる外出サポートを実施して、外出に伴う負担の軽減を図っています。

しかし、3歳以降はそれもなくなります。切れ目のない支援で、少しでも保護者やご家族のご負担を軽減できないものかと途方に暮れる思いです。

このような試練が何重にものしかかる、ケースは稀なのかもしれません。しかし、本当に大変な思いをされているご家庭に寄り添い、負担の軽減を図る意味で、国や東京都の制度では行き届かない部分を区独自のアイデアで補えるような、障害児支援の見直しを図ってはいかがでしょうか。

区長のご所見をお伺いいたします。

以上で質問を終了いたします。ご清聴あがとうございました。