令和元年第三回定例会 一般質問(全文)


  1. 地域防災力向上の取り組みについて
  2. 谷中地域におけるパーソナルモビリティ等の導入について
  3. がん治療に伴う外見(アピアランス)のケアについて
  4. 子どもの権利条約の理解周知について

まず、初めに、防災の月9月を迎え、改めて防災の原点に立ち返り、防災の備え、地域防災力向上の取り組みについて3点伺いたいと思います。近年益々、気候の変動は著しく、私たちは様々な災害に見舞われる可能性に日々さらされている状況です。

本年に入ってからも、先日の台風15号により関東各地など甚大な被害に見舞われました。長引く停電、断水が続く深刻な状況の中、住民の皆さんが不安な毎日を送っています。ほんとうに他人事ではありません。いかに私たちの生活がほぼ電気に頼っているのかということを改めて思い知らされました。

また、大規模な停電の後、電気が復旧し、再び通電した際に起こる通電火災防止の取り組みはさらに重要になると明らかになりました。

台風、豪雨災害、直下型地震などに備え、想定以上の大災害に対して、被害を最小限にすること、すなわち、減災対策が今一度、重要になって参ります。

特に、阪神淡路大震災、東日本大震災以降、大災害からの教訓によって、自助・共助の重要性が注目されております。

本区におきましては、コミュニティ防災の取り組みとして、区内で想定される水害全般にたいして地域の避難計画を検討するワークショップを実施するなどの取り組みが始まります。地域の防災の担い手である、自主防災組織や消防団などが連携力を高めて、防災力向上の底上げを図る体制を構築することを目的としています。

しかしながら、水害に限らず、地震、火災、台風、土砂災害と起こる災害によって、避難の仕方も避難場所もすべて変わってくるということを、区民の皆さんにしっかりと知っていただき、理解していただくことは大変に重要です。

まずは「避難行動は難しい」ということを知って、言わば「避難行動の学力」をつけていくことが肝心なのだと考えます。

また、家庭における防災意識についての課題もあります。

大手玩具メーカーのバンダイが子供の防災対策について、本年7月に行った調査によりますと、災害が起きた時の集合場所や連絡手段について子供としっかり話し合っている家庭は、わずか5.9%という結果でした。約7割の家庭が何らかの防災対策はしているが、災害時について子供と話し合っているかどうかについては、「全く話し合ったことはない」「あまり話し合えていない」という意見が多数を占めていました。

話し合うきっかけは学校の防災訓練や他の地域の災害があった時が多いということです。

そのほか、非常食を備蓄している家庭46.7%の中で子どもが保管場所を知っているとの回答があったのは半分以下であったということです。

やはり、家庭の中で、また、地域的な自助・共助の意識を育て、避難所単位での周知徹底は日ごろからの訓練などがきっかけとなりますので、訓練内容の見直しなどその都度必要になってくると考えます。

一方、全国的に防災の担い手の一つとして、「防災士」の資格取得が進んでいます。

私も先日、講座を受講して参りました。防災士に関しては公明党会派の小菅議員をはじめ、以前より何人かの議員からも触れられています。

改めて申し上げますが、防災士とは、日本防災士機構による講座履修後、筆記試験の合格と、救急救命講習を修了して取得できる資格です。

昨年度は過去最多の方が取得し、本年7月末時点では累計17万6000人を超えましました。

防災士に期待されることとして、一つには、防災・減災に関する知識や技能を身に着けることで自分の命と家族や身近な人の身を守る可能性ができること。

そして、発災直後の現場で、初期消火や、避難のリーダーシップを発揮できうることです。自助・共助の分野で減災の担い手となる方が一人でも多くいることが、被害を最小限にとどめる可能性が上がると言うことです。取得費用を助成する自治体は350に上ります。役所の防災担当者や消防関係者、郵便局などが取得に取り組む例も多くなっています。

先日、全国に先駆け取得費用の全額助成を実施してきた松山市を視察してきました。松山市では、平成26年度から愛媛大学と連携して防災士養成講座を制度化し、民間企業も巻き込み、小中学校の教職員、幼稚園教諭や保育士、児童クラブや福祉施設職員など、本年7月で5384名が取得しています。

この取り組みで、年間の防災訓練や研修会などの参加者が飛躍的に増加しているということで、市民の防災意識の高まりを感じました。

また、定期的に防災士研修会を開催し、地区防災計画の策定を防災士中心に行っているということです。

以前、神戸市「人と防災未来センター」で次のような言葉を伺いました。「地域の防災の担い手は、老若男女、発災時に、その場に居合わせている人たちである」と強い語調で述べられていたこと、大変、胸に響きました。

防災士の取得を後押し、防災士を養成する取り組みは、地域の皆さんの防災意識を高め、防災力を向上させるきっかけとして、有効であると考えます。

また、特に若い世代への防災意識向上の取り組みとしても、受講費用は大変高額であり、自治体として、助成金などの支援は必要であると考えます。

そして、防災士の資格取得後の課題は、活動が個々になるため、取得した技能や知識を生かしきれないということです。

防災士中心に地区の防災計画を立てていくことや、防災訓練の折に積極的に参加しリーダーシップをとっていただけるような仕組み作りが必要で、今後、防災士をいかに活用できるかという視点が自治体に求められていると考えます。

そこで、区長にお伺いいたします。

区として、防災意識を高め自助・共助の取り組みを広く区民に周知するため、地震や水害などの各種の災害に対応した防災訓練、避難訓練の実施を推進する必要があると考えますがご所見をお伺いいたします。

また、防災士の取得を後押しする取り組みは、地域の防災力を向上させるきっかけとして有効であり、防災士を目指す方々に対して受講費用の助成などの支援をすべきであると考えますがご所見をお伺いいたします。

そして防災の担い手として、区内の防災士の方々の活用、防災士との連携についてご所見をお伺いいたします。

 

二点目に、谷中地域におけるパーソナルモビリティ等の導入についてお伺いいたします。

谷中地域において「めぐりん」はまさに日常生活になくてはならない区民の足であり、利便性の高い乗り物となり文京区への延伸により、病院めぐりんの機能も果たすようになりました。しかしながらコース変更により、一部の地域の皆様にご迷惑、ご心配をおかけしたことも事実であります。現在、一部改善されご協力いただいたものの、今後の谷中地域における公共交通の在り方について様々な角度で検討していかなければならないと考えます。

谷中地域は観光資源であり、若者が住みたい街でもあります。一方で、土地の高低差によって買い物や移動が困難な高齢者の方々のお悩みの声も数多く頂戴しております。

本区の都市計画マスタープランの中では、多様なニーズに応じた交通手段の利用促進としてパーソナルモビリティ等の導入・誘導の検討が記載されております。

国土交通省では、環境・経済・社会の統合的向上の考え方に基づき、高齢化が進む地域での地域内交通の確保や環境資源となるような新たな観光モビリティの展開など地域が抱える様々な交通の課題解決と、地域での低炭素型モビリティの普及を同時に進められるグリーンスローモビリティの推進を行っております。

グリーンスローモビリティとは、電動で、時速20km未満で公道を走る4人乗り以上のパブリックモビリティを指します。グリーンスローモビリティの5つの特長として、「Green・Slow・Safety・Small・Open」です。Greenは「CO2排出量が少ない電気自動車」、Slowは「ゆっくりなので、観光にぴったり」、Safetyは「速度制限で安全。高齢者も運転可能」、Smallは「小型なので狭い道でも問題なし」、Openは「窓がない解放感が乗って楽しい」ということです (国土交通省HP参照)。

全国各地では、事業化され導入が進んでいます。豊島区では、池袋エリアの街づくりブランディングの推進、中心市街地を周遊する観光バスとして、また、乗合バス事業を取得し2019年11月より事業が開始されるとのことです。

観光資源が豊かであり、観光客が急増する地域、なおかつ、高低差のある地形ゆえに買い物難民が増えるであろう課題がある谷中地域の諸課題を解決できる、このグリーンスローモビリティの導入は有効であると考えます。

そこで区として今後、導入に向けてどのように検討を進められていくのか区長のご所見をお伺いいたします。

 

三点目に、がん治療に伴う外見(アピアランス)のケアについてお伺いいたします。

がんの治療の中では脱毛や、乳がんの場合、乳房を切除するなど、外見(アピアランス)に著しく変化を伴うことがあります。このような外見の変化は、当事者の治療に対する意欲の低下や就労への障害につながります。特に、子供や若者、女性への影響は大きいのです。その為、ウィッグいわゆる医療用かつらや胸の補正下着などのケアが必要になってまいります。患者とその家族を守る手立てとしてもとても大切な支援であると考えます。

医療用かつらに付随して、ヘアドネーションという活動があります。ウィッグは健康保険の対象外であるため、実費で購入しなければなりません。これは大きな負担となってしまいます。こうした中、NPO法人や企業などが社会貢献として生み出したのがヘアドネーションです。

国内外から寄付された人毛を材料にウィッグを作りがん治療などで脱毛した子供に無償提供する活動が行われています。

今ではがんは2人に1人がなるといわれています。中でも乳がんに関しては、日本では女性がかかる病気のトップであり、増加の一途をたどっています。現在は14人に1人と言われております。港区をはじめ、多くの自治体で外見のケアに必要な購入費用助成制度が始まり、関係者から喜ばれています。

そこで、本区においても、がん治療に伴う外見のケアのなかでもウィッグや乳房補正具の購入費助成制度の導入を積極的に検討されてはいかがでしょうか。区長のご所見をお伺いいたします。

 

最後に、子どもの権利条約の理解周知についてお伺いいたします。

本年、子どもの権利条約が国連で採択されてより30年となります。採択された11月20日は「世界子供の日」にきめられました。

日本では、1994年に批准しています。

子どもの人権を国際的に保障するために定められた条約で、18歳未満の子どもを「権利を持つ主体」と位置づけ、大人と同様の一人の人間としての人権を認めるとともに成長や保護に配慮した権利を定めています。

世界では、兵士として戦わされたり、教育を受けられず、十代で結婚させられたり、差別の中で人権を脅かされる子供たちがいます。また、平和に見える国でも、虐待やいじめなどで命をも脅かされる子供たちが後を絶ちません。

子どもに関するすべての問題に「子どもの権利条約」を中心に位置付け、取り組むことが重要であると考えます。

この節目に、「子どもの権利条約」を広く区民に周知する取り組みを進めてはいかがでしょうか。

日本人初の子どもの権利条約委員会委員として活躍する、弁護士の大谷美紀子さんは、「子どもは、無限の可能性に満ちています。私の世代を超えて未来を生きていきます。と同時に、かけがえのない子ども時代という今を生きているのです。」としています。

条約では、「意見表明権」として、「子どもには意見を聞いてもらう権利がある。」と定めています。

子どもたちが幸福に生きられる環境の中で、親や周囲の大人たちから大切にされているという実感をもてることが肝要です。また、子ども自身が自分を大切に思うことができているのか、私たち大人がその小さな声に耳を傾け続けることの重要性を痛感しております。それが、周りの人も自分と同じように大切な存在だと知ることにつながるのです。

条約や法律で子どもの命や権利が守られる訳ではありませんが、子どもも大人も条約の精神を理解して日々の生活の中に体現していくことが大切なのだと考えます。

自分の立場を押し付けず、相手の立場に立って考える心の余裕を持つことは、大人の世界に限らず子育てにおける親と子の関係にでも重要です。

また、社会全体で子育てする人を温かく応援することで、お子さん自身を虐待などから守ることができるのだと思います。

これらを受け現在までに、数多くの自治体で子どもの権利に関する条例の制定がなされています。

世田谷区では「条約の思いが広まって、暴力やいじめなどで悲しい思いをする子が減ってほしい」との一人の小学生の呼びかけがきっかけになり、本年度から母子健康手帳に掲載しているとのことです。

 

理解周知の例として、母子手帳に子どもの権利条約の文言を紹介できるQRコードを記載してユニセフのホームページを検索できるようにする、また、子どもにもわかる形の「やさしい子供の権利条約」の冊子を作成し、読み聞かせの際に活用することや、講演会などを開催する、などが考えられますが、いかがでしょうか。

これからも、子どもの権利条約の精神をお子さんにも親御さんにも理解を深めていただけるよう、広く区民に周知する取り組みを進めるべきであると考えますが、区長のご所見をお伺いいたします。