平成28年予算特別委員会 総括質問全文


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平成28年度予算特別委員会総括質問

台東区議会公明党の松尾伸子です。大きく3点に渡り、区長、教育長にお伺いいたします。

まず、区長と語る会について伺います。
平成26年度決算特別委員会総括質問でも触れましたが、公職選挙法等改正により、本年6月に18歳選挙権が施行、今夏の参議院選挙から実施されることになりますが、若年層に対する政治参加の促進や啓発、主権者としての教育は喫緊の課題となっております。
台東区でも、中学生に対する出前講座や生徒会選挙などに選挙用機材を貸し出すなど実施しているところです。
18歳以上というと、高校生のことが話題になりますが、主権者教育は、小中学生から取り組んでいくことが大事であると思います。また、区内にある大学や専門学校と連携して、若年層全般に対する投票啓発のキャンペーンなどの取り組みも重要であると考えます。
練馬区や福岡県では模擬投票や、投票用紙の交付、選挙人名簿との照合などの選挙事務への参加、自身の投票履歴が掲載される「選挙パスポート」の発行など、先進的な取り組みがなされています。
さて、昨年4月に実施された、区議会議員選挙の投票率が前回より低下している一方で、期日前投票は、前回と比べると4,859人増えています。若者の生活様式、投票行動とその利便性向上を考えた時に、期日前投票の会場が不足しているのではないか、区民館を活用するなど、期日前投票所の増設が必要なのではとの提案に、今回、金杉区民館が投票所として活用、拡充されることになり、大変喜んでいるところです。
今後、電子投票導入の議論も進んでくることが予想されます。
しかしながら、その実現にはまだ時間を要するでしょう。それまでの間、投票率のアップ、投票権行使の利便性向上のため、期日前投票所の更なる増設や時間の延長など工夫が必要であると思います。
ところで若者の生の声を聴いていくこと、また、若者と議論を進めていくことは、大変重要なことだと考えております。
平成28年度も、区民サービスの原点は、区民の声に耳を傾けるということで、区長自ら率先して範を示され、各種団体の語る会を16回開催の予定で予算が組まれています。中でも昨年に引き続き、区立中学校の代表との語る会を実施されるということで、若者の生の声を聴いてくだるとのことです。そこで今後、この取り組みをさらに進化させて、若者、女性、子育て世代などへ、区から積極的に区民の中に飛び込み、生の声を聴く機会を増やしていかれてはどうでしょうか。
区長のご所見を伺います。
横浜市では、市長が参加する広聴事業の一つとして、地域で活躍している団体やグループの活動場所に訪問し、意見交換する「ぬくもりトーク」を実施し成果を上げています。
地域の10代20代が中心メンバーで活動するボランティアメンバーと懇談した折の模様が、地域情報誌に掲載され地域活動を担っている若者の活躍をたたえていました。
また、中野区でも、「若者と政治をつなぐ」ことをコンセプトに活動するNPO法人ユースクリエイトが橋渡しとなり、若者と区職員が「ワールドカフェ」という手法を用いて、活発な意見交換会を開催したということです。
積極的に投票に行き、地域や社会に参画する若者を増やしていくにはどのような手法が有効かなどについて話し合われ、区としても、それをもとに選挙啓発を中心とした施策の参考に活かしていくということです。
主権者教育、投票率アップ、地域活動の活性化といっても、また、20年・30年後の国・地域を支え、発展させゆくのも今の子供や若者たちです。
区長と区の職員が、子供や若者をはじめ、区民の生の声を聴く機会は大変大切です。国の仕組みや、区の取り組みを共に知り、判断し、解決策を考える良い機会になると思います。
年中行事的な「語る会」ではなく、旬のテーマを設定し、いろいろな世代、立場の方々と話し合う場としての「区長と語る会」を企画するなど、工夫してはいかがでしょうか。
区長のご所見をお伺いいたします。

次に地域の防災力強化についてお伺い致します。
3・11東日本大震災より5年が経過しました。改めて、思い返しますと当日、私自身、街なかにおりまして、大きな揺れが治まるまで、付近の建物の1階の駐車場に避難させていただきました。
周りに居合わせた方々と、お互いの無事を確認しあい、その後、すぐに、自宅マンションへ帰り、隣近所の方々の状況を伺いにいくと、みなさん、近所同士で、倒れた箪笥を直したりしていました。
特に、一人暮らしの高齢者や小さなお子さんを抱える若いおかあさんが、とても不安な様子でいらっしゃいました。
その方たちは、怖くて、部屋に居られないと、夜遅くまで、マンションの1階のロビーに座り込んでご主人の帰りを待っており、また、両親の帰りを待つ小学生もいました。そして、めいめいが持ち寄ったお菓子を分け合って食べていました。マンション内での、自然発生的な共助の姿がありました。今思い返してみても、やはり、震災直後の自助・共助、特に防災の観点での互助的な助けが必要な人と力を貸せる人、身近な地域の相互の助け合いの必要性と支援体制の整備が緊急の課題であると実感しております。
ところで、災害時の地域に於ける共助の力を強化するため、地域の特性に応じた、近隣住民相互の支援体制など、共助の取り組みを実施している先進的な自主防災組織の認定制度などを含む「東京都防災対応指針」が発表されています。
都内には現在、約6千の自主防災組織がありますが、休眠状態のところも多いと言われ、一方、町会等の中には、災害時の安否確認の手順を定めたり、非常用発電機や救助用の機器を備えたり、非常時に料金後払いで食料を調達できるよう近隣食料品店と契約するなど、先進的に取り組んでいるところもあります。都はこうしたグループについて、先進的な事例として認定し、事例集を作成・配付、また、コンクールで表彰するなど、共助の気運を高め、他の地域への波及を図るものです。これ以外にも、専門家の派遣や、地域の防災リーダーの研修等を実施し、共助の中心的役割を担う人材育成に取り組むとしています。
地域の防災・減災意識が高まりつつある中、一方では、仕事などで時間の余裕がなく防災訓練に参加できないという現実もあります。また、高齢世帯の多い地域などへの対応をどうしていくのかなど、それぞれの地域ならではの課題が多くあります。だからこそ、画一的ではない、特色ある取り組みが大事になってくると考えます。
区内においては、震災時の助け合い、地域での互助、共助、公助の観点から、特に集合住宅との防災協定締結がなかなか進まないとの課題があります。
集合住宅への防災資機材助成申請時に、せめて、地元の単位町会と防災協定を結んでいただくなど、互助・共助の仕組みを整備してはどうでしょうか。
また、今年度、区では避難行動要支援者対策を見直し、来年度、関係機関へ要支援者名簿が配布されることになっています。災害時に要支援者対策が機能するには地域の協力、共助が不可欠だと考えます。要支援者の対象が今般明確になったのは評価できますが、避難等に当たり支援を必要とする災害弱者の方は他にもいます。要配慮者ということで、発達障害児者や妊産婦などもいらっしゃいます。避難に際しては、対応に特別な配慮やマニュアルが必要な方もいます。対応マニュアルの追加も必要ではないかと考えます。
そこで、避難行動要支援者に対する全体計画の見直しを行い、要配慮者とされている妊産婦や発達障害児者を避難行動要支援者名簿に登載する必要があると考えますが、区長のご所見を伺います。
さらに、保育園、幼稚園、小中学校における学校危機管理マニュアルは現在、教育委員会が平成22年に示した学校危機管理マニュアルをもとにしています。やはり教育委員会としてあらたに学校危機管理マニュアルを整備し、学校防災のガイドラインを区として示していくべきであると考えます。また、震災時避難行動マニュアルなど、児童・生徒、学校関係者、保護者、地域などへ、更に周知徹底をはかっていかれることを要望いたします。
中央区では、 従来の「学校防災基本計画」〈平成8(1996)年10月策定〉を平成26年に「学校危機管理マニュアル」に改定したもので、 当時の「中央区地域防災計画」との整合性を図りながら、防災拠点運営委員会への学校の協力などを盛り込んだ「震災対策」に加え、従来なかった「風水害・津波対策」や「防犯対策」、「感染症等」といったものを加え、多様な危機に対応するもので、 その後、3・11東日本大震災の経験をもとに改定されています。
また、東京都防災会議が平成24(2012)年4月に発表した「首都直下地震等による東京の被害想定」を受け、さらに、「東京都帰宅困難者対策条例」施行に伴い、 危機管理に係る状況の変化に加え、学校現場と地域の実情を踏まえて、児童・生徒はもとより教職員の生命・身体の安全確保を第一に、地域の防災拠点としての機能が十分に発揮されるよう、自校の実情に合ったマニュアルづくりとそれに基づく訓練や教育を推進することを目的にしているとあります。
内容的には、マニュアル自体を児童・生徒の状況や、学区域内のまちの変化を常に的確にとらえ、効率、効果的な見直しを進めることができる、PDCAサイクルすなわちPLAN、DO、CHECK、ACTIONによる無理のない見直しを図ることにより、活きたマニュアルになるようにしていることや、発災時の対応についても、災害時アクションカードの活用、また、3・11の教訓である、釜石市の避難3原則、「想定に捉われるな、最善を尽くせ、率先避難者たれ」との指針をもとにした、年齢に応じた防災教育の実施など、多岐にわたり、網羅されているものです。
ついては、本区でも、区教育委員会が主導して、新たな学校危機管理マニュアルを整備し、学校防災等のガイドラインを示していかれるべきであると考えます。
教育長のご所見をお伺いいたします。

三点目は、母子総合相談窓口となる拠点施設の整備についてお伺いいたします。
平成27年度第4回定例会一般質問において、産前産後のトータルケアについて質問いたしましたが、昨今、高齢出産する方が増え、産後を支える両親も当然高齢化しており、なかなか援助が受けにくい場合が多くなっています。産後直後は、急激な母体の変化と生活環境の変化のなかで、母子が孤立しがちであります。ゆっくりと話を聞いてもらえる相談相手も少なく不安な状況の中では、育児においても孤立感をつのらせて、ひいては虐待などへの移行リスクの要因となる可能性を秘めています。
産後鬱や虐待などを未然に防ぐためには、産前から、産後直後の環境整備を図り、また、その後も切れ目のない育児ケアが必要であると思います。
本区では、早期の赤ちゃん全戸訪問や母子手帳交付の際に産後の環境を整えるためのアンケートを実施し、ハイリスクの可能性のある母子のケアに力を入れて頂いているところです。しかしながら、産前から病院や役所、また、保健所と必要に応じて様々な機関に足を運び、出産後も然り、行く先がいくつもあり、そのたびに相談内容や、子どもの状況を一から説明しなければなりません。やはり産前産後の切れ目のない一貫した総合的なサポート体制を整えることが重要です。加えて、安心して子を産み育てられる環境を整えることは、少子化の歯止めにもなることは言うまでもありません。
現在本区では、3か所のこども家庭支援センターにて、18歳までのお子さんの相談支援を実施しています。しかし、更なる周知が必要ですが、地域の偏在もあり、利用者の利便性を考えると、課題があると思われます。
国の子ども子育て支援新制度のスタートにあわせ、東京都では妊娠期からの切れ目ない支援体制を構築するための補助事業である、「ゆりかご・とうきょう事業」を平成27年度から開始しました。
妊娠期から子育て期にわたる妊産婦などへ切れ目のない支援を行う自治体に対して、専門職の配置や育児パッケージの配布にかかる経費を補助することにより、取り組みの一層の充実を促すことを目的としているこの事業に対し、区としても活用してはどうかと以前提案させていただいておりましたが、このたび「ゆりかごたいとう」として予算化されたことは評価させていただいております。
しかし、都の事業名にならい、折角「ゆりかごたいとう」との事業名で事業を展開するのであれば、台東区の特性を活かした形に進化させてはいかがでしょうか。
そもそも東京都の目指していく「ネウボラ」とは、フィンランドのどの自治体にもあり、フィンランド語で助言の場、妊娠出産・子育てに関する様々な相談に応じる支援の拠点という意味で、妊娠から出産、基本的に就学前までの子育てへの切れ目のないサポートを母子のみならずその家族に対して、総合的な支援サービスとして提供しているというものです。都はこの東京版「ネウボラ」ともいうべき仕組みづくりを目指していくということで、23区では、豊島区がトップバッターとして滑り出しているということです。
中野区、文京区では、都の補助事業を活用し、母子保健相談支援事業、産前産後サポート事業、産後ケア事業の3本柱の「文京区版ネウボラ事業」を実施しています。保健師が母子保健コーディネーターとして、妊娠期から就学までの子育ての相談に応じ必要に応じて、サポートプランを提供します。また、産後の心身の不調を整え、又、育児不安のあるかたで家族のサポートが受けられない方に助産院でのショートステイを実施するとのことです。
加えて、国においては、総合的相談支援を提供するワンストップ拠点として子育て世代包括支援センターの整備を、平成27年度中に150か所、その後概ね5年後までには、地域の実情等を踏まえながら全国展開を目指すとしています。
産後鬱や虐待を未然に防ぎ、安心して子供を産み育てられる環境づくりのため、一つの窓口が子どもの成長に関わる全ての部署を包括し、産前産後、育児、教育の切れ目のないサポート体制を整備し、また、母子のみならず、お子さんを保護するご家族がいつでも子育ての総合的な支援を受けられる拠点として台東版「ネウボラ」をめざし、たいとう母子健康センターを整備してはいかがでしょうか。
重ねて申し上げますが、区民にとっては、わかりやすい相談窓口が必要です。相談のきっかけとして「入り口は一つ」が区民にとって、分かりやすいのです。毎日の育児の中で、悩みを抱え途方に暮れている方々にとって、相談窓口はどこなのか、たどり着くまで大変な思いをしている人は、少なくありません。とくに、お子さんの発達に係わるような漠然とした悩みや、不安を抱えている保護者で、どこへ相談に行けばよいのかわからないという声も聞かれます。
生涯学習センターの活用方、スペースを見直し、以前、提案しておりますが、教育支援館の機能と連携して、発達障害に特化した相談支援や、もちろん、母子健診・相談も、産前産後ケア、子育て世代包括支援センターの機能も備えた、お母さんとお子さんの健全な成長を支援していく母子健康センターを整備してもよいのではと考えます。
区のことは区役所に行くというように、母子のことなら「そうだ!」と思えるような象徴的な拠点はどこなのか、やはり生涯学習センターのような、区民の誰でもがわかりやすい場所に母子健康センターを設けるべきではないでしょうか。
区長のご所見をお伺いいたします。