平成26年度決算特別委員会総括質問



平成26年の決算を認定する立場で、また、さらに、より良い政策に発展していただきたいとの思いで、大きく4点に渡り総括質問させていただきます。

 【要旨】

  1. 平和記念事業、特に戦争体験の語り部事業や展示など積極的な取り組みについて
  2. 防災・初期消火のアイテムとして、ポータブルの簡易消化装置の導入、感震ブレーカーの周知と設置助成導入を!
  3. 18歳選挙権対策として、小中学生への主権者教育の実施や、投票率アップの取り組みについて
  4. こども療育の根本的な見直しと福祉と教育の緊密な連携により、一貫した切れ目のない支援の仕組みづくりについて

1.平和祈念事業について

第2次世界大戦末期、昭和20年3月10日未明、現在の台東区・江東区・墨田区を中心に2時間あまりにわたって無差別な爆撃にみまわれ下町一帯は猛火の海となり、約10万人の市民が犠牲となりました。

東京大空襲より70年を迎えた本年、台東区においては3月10日に平和のつどいが開催され、それと同時に戦争体験記録集、平和祈念写真集の作成や体験者27名に対するインタビューを座談会形式で行われました。

このように、戦争の記憶を忘れない。後世に伝えていくという貴い取り組みは、大変に重要であるということはいうまでもありません。

今回限りの単発的な事業ではなく、続けていくことがとても大事なことではないでしょうか。

ヒロシマでは、平和記念資料館の設置、国内外での原爆展の開催、平和学習用資料の貸し出し、被爆建物・樹木の保存継承など、また、被爆体験継承と伝承の必要性から、さらに、原爆投下70年にして被爆者の平均年齢が80歳を超えてきたことから、被爆者の声を直接聴けるうちに、被爆体験の継承・伝承を進め、未来永劫にわたり、正確に語り継いでゆくために、平和への思いを共有し継承する後継者を育成する必要がある。と、伝承者の養成に取り組んでいます。いわゆる「語り部」の養成事業を行っているということです。

伝承者の養成状況は平成24年度から27年度までで、応募者318人、養成講座受講者210人、委嘱者50人が実際に語り部として活動をされています。

米国の哲学者ジョージ・サンタヤーナの言葉に「過去を記憶できない者はその過去を繰り返す運命を背負わされる」とあります。

体験者の皆さんにとっては、忘れてしまいたい忌まわしい記憶を語り伝えていくということは、勇気がいることでもあります。その勇気の証言を大事にお伺いし、受け止めていくことが平和に対する着実な教育になると確信します。実際に、戦争を経験していない青少年に対しては、やはり実体験ほど影響力のあるものはなく、伝え続けていく事業が必要であると思います。

そこで、一つには、生涯学習センターなどで常設展示のコーナーを設け、小中学生の手に資料を触れてもらう取り組みはどうでしょうか。

また、今後も、戦争体験の情報を集める取り組みとして、語り部になっていただける方を募り、特別授業などで生の声を伝えて頂くことも非常に大切なことと思います。

恒久的な平和の意識を醸成し、育てていく、このような事業について、区長のご所見を伺います。

2.防災初期消火体制の強化について

私は、議員になって以来、一貫してこの初期消火対策について訴えさせていただいております。台東区の地域におきまして、不燃化の対策はますます急務となっておりますので、あらためて、区長のご所見をお伺いいたします。

台東区におきましては、D級可搬式ポンプ、スタンドパイプなどの配置を迅速に推進し、初期消火体制の強化を図っているところであります。

密集住宅市街地整備促進事業地区である谷中2・3・5丁目地区及び根岸3・4・5丁目地区の防災性向上を図る目的で、東京都建築安全条例に基づく「新たな防火規制」区域に指定され、東京都が進める「木密地域不燃化10年プロジェクト」では、谷中2・3・5丁目地区が「不燃化特区」の指定を受けております。

いずれにしても燃えない・燃え広がらないまちづくりが加速的に、これまで以上に推進されていくこととなりました。

ところで、東京都の防災会議において被害想定が修正され、現在は、東京湾北部で発生条件が冬の午後6時に風速8メートルで、マグニチュード7.3の首都直下地震が起きた場合、火災による建物被害は約18万棟にのぼり、死者は推計4,100人とみられています。いずれにしても木造住宅が密集する地区では、区民の皆様の災害に対する高い防災意識、自助努力が大変重要であると考えます。

以前より初期消火のアイテムが、さまざま開発されており、中でも簡易水道消火装置、いわゆる「街かど消火栓」で、特にポータブルタイプの「街かど消火ハリアー」は使い勝手の良さが広く認識されてきており、平成26年度予算特別委員会総括質問においても提案させていただいたものです。

現在、文京区や足立区において予算化されております。

まちかど消火栓は水道水を使用して初期消火する装置で特殊機能の開発ノズルが水道水の勢いを増加させて大量の水を遠くへ飛ばすことが可能とのことです。つまり、消火栓を必要としない、水道栓があれば使用可能であるという利便性の高いものです。そして大事なことですが、女性や高齢者をはじめ誰でも容易に操作でき、維持管理が簡単で、日常的な使用でいざという時の訓練ができるというものであります。木造住宅が密集する地区では、このような、初期消火のツールが有効であることは、広く認識されるところとなりました。

台東区においては、このほど谷中防災コミュニティーセンターにおいて、D級ポンプ、スタンドパイプなどに続き「まちかど消火ハリアー」を1基展示紹介されることになり、初期消火のアイテムがまた一つ、広く区民に対して周知されることになり大変喜んでいるところであります。

加えて、もう一つ、そもそも震災時において、火を出さない、火事を起こさせない、ということが最も重要であると考えます。直下型地震において、電気ストーブや白熱電球などによる『通電火災(つうでんかさい)』が原因で火災になる可能性が高いということです。地震による停電のあと、復旧した時、火の元となる恐れがあり、どこの家庭でも、その危険があります。この通電火災は、阪神淡路大震災の時に、その危険性が広く知られるようになりましたが「原因が特定された建物火災の6割が、通電火災によるものだった」ということです。

この通電火災に対して、有効なツールとしましては、今回の被害想定でも明らかなように感震ブレーカーなどの普及が促されています。

感震ブレーカーは、震度6以上で作動し、自動的にブレーカーを落とすことができます。

すべての家庭に火災の可能性があるので、木造住宅密集地域においては、早急な周知徹底が必要であると考えます。

そこで、今後、台東区でも先駆的に木造密集住宅地域とくに狭隘な地域に、活用可能な初期消火のアイテムとして、だれもが簡単に操作できる簡易水道消火装置(街かど消火栓)ポータブルタイプの街かど消火ハリアーの配備と、感震ブレーカーへの設置助成を検討してはどうかと考えます。

区長のご所見をお伺いいたします。

3.18歳選挙権について

2016年6月に18歳選挙権が施行され、夏の参議院選挙から適用されることになりますが、若年層に対する政治参加の促進や、啓蒙、主権者としての教育は喫緊の課題となります。

台東区でも、18歳以上というと、高校生のことが話題になりますが、主権者教育は、小中学生から取り組んでいくことが大事であると思いますし、大学・専門学校と連携して、若年層に対する投票啓蒙のキャンペーンなどの取り組みも重要であると考えます。

練馬区や福岡県では模擬投票や、投票用紙の交付、選挙人名簿との照合などの選挙事務への参加、自身の投票履歴が掲載される「選挙パスポート」の発行など、先進的な取り組みがなされています。

そこで、小中学校での模擬投票や、政治・社会に参画していく意識・知識・責任感などを体得させるための恒常的な主権者教育の必要性、加えて、若年層への投票啓発の取り組みについて区長のご所見を伺います。

また、投票率を上げていく対策としては、本年4月に実施された、区議会議員選挙の投票率をみてみると、前回が49.5%、今回が44%と下がっていて、それに対して期日前投票では、前回から比べ4,859人増えています。若者の生活様式、投票行動とその利便性向上を考えた時に、期日前投票の会場が区内4か所では足りないと思われ、区民館を活用するなど、期日前投票所の増設が必要ではないでしょうか。

一方、国の電子投票の導入の議論は停滞している感がありますが、区として総務省に対して、電子投票実現の議論を進めて頂くよう意見書を提出してもよいのではと考えます。いずれにしても、電子投票を視野に入れ、選挙公報の電子化への可能性も図って、選挙における電子化をいっそう推進されてみてはいかがでしょうか。

また、投票場の環境についても課題があると思います。

先日区民の方から相談を受けました。区議会議員選挙の投票日に、歩行が不自由な方が「やっとの思いで会場についたのだが、一呼吸置く場所がなく具合が悪くなってしまった。入り口の段差にも困ってしまった。」ということでした。休憩用の椅子の設置やバリヤフリー化など、ほんの少し環境を整えることで気持ち良く投票できるので、投票率アップには大切な視点ではないでしょうか。

若年層への投票率アップの対策として、期日前投票会場の拡充も含め投票場の環境整備について区長のご所見をお伺いいたします。

4.子ども療育について

審議の中で近年の松が谷福祉会館で行われている、子ども療育室の利用状況の推移について確認しましたが、平成26年度の契約児童128人・相談児童187人ということで10年前から比べると年々増加傾向にありほぼ倍の利用者数となっております一方、26年度、新規の面接を受けた85名に対し、子ども療育が必要でなかったと思われる人は、19人ということでした。要するに、66人の方は何らかの療育が必要であるということです。

また、先日、ご相談に行かれたお母さんより、お子さんには、集団指導が必要だけれども、子ども療育室では、定員枠もいっぱいの状況だということで、個別の枠になってしまったと伺いました。

さらに、幼稚園や保育園などに巡回訪問する件数は約3倍になっており、人的なリソースも場所的なリソースもたりなくなっているのが現状ではないでしょうか。

土曜日日曜日の療育をというニーズも出てくるかと思います。

民間への連携先もありますが、適応やニーズに対してマッチング出来ない状況が生じているということでした。

現在の松が谷福祉会館内では、必要な支援のメニュー枠を広げることや、受け入れ態勢に限界があると思われます。

まず、療育が必要なお子さんにとって、十分な定員枠を拡充できるように、根本から見直すことが必要ではないかと考えます。

「改正障害者基本法」の中では障害児が社会的に自立するための訓練などを行う「療育」の促進がしっかりと定められています。

発達に障害がみられる子供は年々増加傾向にあります。ある地域では、1歳半健診を受けた子供の20パーセントが要観察と判断され、その半数は精神面の発達の問題が心配されています。5人に1人が育児上の心配があるとのことです。

また、近年、保育園、幼稚園、小学校などで、いわゆる気になる子が増えている状況があります。また明らかに発達障害と認められる子どもも増えている中で、一方では障害が認められないとする子どもの中にも、潜在的に発達障害を抱えている場合があります。いわゆるグレーゾーンといわれるように潜在的に発達障害を抱えている、お子さんと親御さんへの支援が重要であると思えます。一般的には、見えずらい、分かりづらいがゆえに、抱えるご苦労も大変なものがあると考えます。

保護者にとっては、ほかの子と何かが違う、わが子に何が起こっているのか、だれに相談していいのか本当に悩むところです。また、そのような、「何かが違う」と実感する時期も、そのお子さんによって、それぞれ違います。3歳児健診で気づかされることもあれば、小学校に入ってみてわかるということもあります。また、中学生になって、不登校などのトラブルから気付くこともあります。

社会に出てみて初めて分かる方もいます。大人の発達障害という言葉で、注目されるようになりましたが、この方々も増加傾向にあります。

要は、わっかた時にどのような支援を受けることができるかということが肝心だと思います。

いま発達障害であるとわっかたお子さんも、それと認められないとしても、安心して相談ができて、早急にしっかりと療育が受けられる体制づくりが求められています。役所内の所管としては、障害福祉課が対応し、各課と連携を取っていただいていると思いますが、教育委員会の教育支援館との対応がもう一歩必要であると感じております。

日野市では、平成26年4月より、「エール」日野市発達・教育支援センターを開設しています。エールという施設名は公募により決定し、支援が必要な子供と保護者へ「心を一つにして応援する」という意味が込められているそうです。

この施設は、0歳から18歳までの発達面、行動面、学校生活面において支援を必要とする子どもと、子どもの発達に対し不安を抱えている保護者の総合的な相談・支援機関になっています。福祉部門と教育部門の所管がセンターに設置され一体となって、子どもの育ちに関する相談窓口を一本化し、継続的に支援する仕組みとして、注目されているとのことです。

発達や教育についての相談や支援は「わかりやすい」ということが最も重要であると考えます。また福祉と教育の密な連携で、切れ目ない支援が一人の子供を健全に育成し、自立の道を開いていくことになると確信します。

以前から提案しております、一人ひとりのカルテを作成し、本人が保存できるような仕組みづくりや、一貫して切れ目のないサポートができる仕組みづくりが必要であると考えます。例えば、就学前に療育に通っていたお子さんが、高校を卒業後に就労してから、改めて課題を感じたときに、自身のカルテ的な資料が必要になっても現状では限界があると思えます。また、こども療育室の場所や人員の見直しが必要だと考えます。

日野市のような「子ども全般」に関する事柄に特化した、福祉と教育の一体化という考え方は、これからの組織づくりに必要な観点であると考えますが、区長の所見を伺います。

以上